たった一言や、言い回しが違うだけで、生徒をやる気にさせられる場合も、逆にやる気を失わせる場合もあります。

それを改めて考えさせられる、日常の出来事の話です。

(食事中の方は読まないほうが良いかもしれません)

先日、健康診断に行って来ました。
例のごとくバリウム検査です。

健康診断そのものは抵抗無いのですが、バリウム検査を考えると足が鈍ります。
特に検査後の下剤を飲んでの格闘がつらいですね。

その検査中の出来事。

いきなり出される「胃薬を広げるお薬」が最初の難関です。これを飲み干すと、胃の中で炭酸ジュースをシェイクしたように、お腹の中が空気で満たされます。もちろんお約束の「げっぷは我慢してください」と言われるのですが、本当に口から吹き出しそうな状態になります。

昔ドリフのコントで、バリウムを飲んだ後にげっぷしてしまい、何度も飲み直しさせられるというのがありましたが、バリウムを飲む度にあれが頭に浮かびました(笑)

続いてバリウムですが、最近はマイルドな味になっていて、とても飲みやすいです。普通に飲むだけなら全く抵抗無く飲めるのですが、胃の中が空気で満タン状態で大変です。しかも後で下剤を飲んでの格闘があることを思い起こすと、さらにためらってしまいますよね。

普通に飲めば良いのかと思いきや、今回は「バリウムを1口含み、上を向いてから口を大きく開け、口の中を空気でいっぱいにし、空気と一緒に飲み込んでください」という指示がありました。私は初めてでしたが最近のスタンダードなのでしょうか?

空気と一緒に水を飲むのもやったことが無いのに、いきなりバリウムでトライです(笑)
普通に上を向いて液体を飲むだけでも大変なのですが、げっぷをこらえながら空気を吸えとは拷問です。やったことが無いため違和感ありまくりで、何回か失敗してやり直しさせられました。

それが済むと、検査開始です。最初は立って、次は仰向けになり、右に左にぐるぐる回りと、次から次へと来る指示通りに動きます。バリウムの逆流をこらえながら、「大きく吸って・・・そのまま」「今度は吐いて・・・はい止めて」など呼吸の指示も飛び交います。その間、寝ている台も検査医師の操作でグルングルン動きます。

思い出しただけで、吐きそうになりますね(笑)
「まな板の上の鯉」の言葉が浮かび、「横から見たら人体実験みたいだなあ・・・」と思いながら受けていました。

 

さて、その指示に従ってあっちを向いたりこっちを向いたりしている時のこと。

さんざん動きまわって、「まだやるのか・・・」と思い始めていた時に、「はい吸って、息を止めて」と言われたところで間違えて吐いてしまいました。その時すかさず「ちゃんと止めて!」と強めの言葉で言われ、私は慌てて吸い直しました。

その時は「しまった。悪いことをしたな」と思い、その後は問題なく終わりました。

しかし、後で振り返った時に「あの言い方をされると、人によってはむっとするのかもしれないな」と思いました。

もちろん向こうに悪気は全く無いでしょう。それに毎日のようにたくさんの人を検査しますし、同じような指示を出し続けているわけですから、指示通りやってくれない場合には強い言葉がついて出ると思います。ですから、検査している人が悪いとは思いません。

ところが、実はこれは「生徒にやると、やる気を無くす指導」と同じなのです。

「指示がまずいのに、指示通りできないと注意される」のはやる気がなくなる

検査中には「右を見て」「左を見て」の指示があったのですが、これがとても分かりにくかったのです。

「右を向いて」「左を向いて」ならば分かります。しかし「こっち向いて」と言われても、台が動いているわけですし、声の主は部屋の外ですから、どちらなのかすぐには分かりません。

「上を向いて」も、何しろ宇宙飛行士のようにグルングルン回っているのですから、立っている状態の上と、仰向け状態の上とでは方向が全然違います。

「少し右向いて」と言われても、「少し」がどれだけかさっぱり分かりません。

 

実際の検査では、医師にも「うまく伝わるような言い方をしよう」という配慮が感じ取れました。「上を向いて」と言った直後に「頭のほうを向いて」と言い直したり、「右を向いて」と言った直後に「右側を下にして真横になって」と言い直したりですね。指示は、言い方次第で分かりやすさが全く違ってきますから、こういう配慮は大切です。

しかし、大量の指示を出して混乱しやすい現実は変わりません。人間であれば1つくらい間違えるのはしかたないものです。言うほうが間違えるくらいですからね(笑)

(ちなみに指導技術的に言うと、言い直しは逆に分かりにくくさせる原因ですから、授業中は極限まで言い直しを減らしましょう。特に低学年の場合は生徒の混乱を呼びやすいため、気軽に言い直しをする時点で指導力の無い教師に認定です)

 

また、相手が間違えた時に優しい言い方ができるか、きつい言い方になるかは、その人次第です。

「ちゃんと止めて!」くらいは、優しいほうだと思います。
「こっちと言ったらこっちだろう。ちゃんと向け!」などの言い方もできますからね。

今回のような検査の場合は機械を操作しながらですから、指示の細かい表現にまで十分気が回らないのはしかたありません。しかし、生徒を教えるのには機械の操作も何も必要ありませんよね。

「ノート開いて」「問題番号書いて」「ちゃんと定規使って」「字が汚い」「ページ数が書いてないよ」「問題文も移して」「途中式も書きなさい」「きちんと行の頭を揃えて」「問題文に線を引きなさい」「大事なところに丸をつけてから解きなさい」などなど・・・

指導に「指示」はつきものですが、指示の洪水状態になっていることに、指示している本人はなかなか気づけません。「あれやりなさい」「これやりなさい」と立て続けに言い続けられたら、どれからやって良いか混乱しますよね。

「どうして言ったとおりにできないの!?」

生徒を教えていると、言った通りに動いてくれなくて、そう思うこともあるでしょう。

しかし、それはひとえに「言い方が悪いから」です。

そして、言い方が悪いのに生徒に責任を押しつけるような態度を見せると、生徒もむっとするか萎縮しますし、どちらにしても確実にやる気が低下します。言っているほうからは見えませんが、心の中ではそういうことが起きているのです。

まずい指示をしていながら、指示通りできないことを責めてはいけないのですね。

 

「間違えた内容を勘違いされる」とやる気がなくなる

私は「はい吸って、息を止めて」のところで息を吐いてしまい、「ちゃんと止めて!」と言われました。

ところが、実は検査中に私が勘違いしたのは「止めるのを忘れた」のではありません。「はい吸って、息を止めて」を「はい吸って、息を吐いて」と聞き間違えたのです。少し前にも似たような指示が出ていて、ごっちゃになってしまったのですね。

ですから、正確には「ちゃんと止めてなかった(=止め方がまずかった)」のではなく、「そもそも止めることさえ分かっていなかった」のです。

これは、はっきり言って屁理屈です(笑)

しかし、指示を受ける生徒の立場からすれば、この違いを理解してもらえないままに注意されたり叱られたりすると、納得できずにやる気が消え失せてしまいます。

 

大人でも「間違えた理由を正しく把握してもらえなかった」ことで、仕事や家事のやる気をなくしたり、心に不満をためたりしますよね。

ミスをとがめられて「そうじゃない」「本当は違う」と言いたいのをぐっとこらえた記憶は誰にでもあるはずです。何がそうじゃないのか、何が違うのか。それは「正しく把握してほしい」という心の表れだったのではないでしょうか。

人は誰しも、自分のことを正しく理解してもらいたいと思っています。たとえ間違いを犯した場合でも「なぜその間違いを犯したのか」をきちんと把握してもらいたくなるものです。

反抗期にさしかかった多感な生徒であれば、その傾向は尚更強くなります。自分が若い頃でも、自分のことを全く理解してくれない大人の言うことうを聞く気になれなかったですよね?(笑)

 

間違いを指摘するのにも、「正しく指摘する」ことが大切なのです。中途半端にずれた指摘をされると、たとえ自分に非があると分かっていても、それとは関係ないところで反発してしまうものです。

逆に、自分の気持ちを踏まえた言い方をされると素直に聞ける生徒が多いです。たとえその場は聞けなくても心の中で「この人は分かってくれる」と思ってくれるものですから。

とても大切なポイントですから、親も教師もぜひ気にかけてみてください。

 

簡単な解決策

今回のような場合ですと、とりあえず「強い言い方」をやめれば問題解決です(笑)

もちろん、教える側の心構えとしては「分かりやすい指示を追求する」ことや、「生徒の間違いの本当の理由を見つける」ことがとても大事です。

しかし、教師はともかく親がそこまでやってられませんよね。今回だと機械の操作をしながらの医師にそこまで求めるのはさすがに無理があります。ですから、とりあえずは「相手が傷つく可能性のある言い方をしない」だけで、とても穏やかな関係が作れます。

生徒が言ったとおりにできなくても、「自分の言い方が悪いのではないか?」「指摘するポイントを間違えているのではないか?」と考えて、できるだけ優しい言い方にしてみてください。相手が悪いと決めつけるのでは無く、「もしかしたら自分にも原因があるかもしれない」という気持ちで接することです。言い方1つで人間関係は円滑になるものですし、きつい言い方をしても物事がうまく進むことは無いですから。

ただし、子育てや日常生活全てでそうすべきという意味ではありませんよ。あまり考えすぎると何も言えなくなってしまいますから(笑)

しかし、生徒に学習させたい時や勉強を教える時には絶対に重要なことですから、ぜひとも注意してみてくださいね。

 

~おまけに~

検査の最後は、お腹を器具(これも遠隔操作で動く)で押しながら撮影でした。

「もうげっぷしてもいいですからね」と言われますが、今まで散々こらえていたせいで、出そうとしてもちっとも出ません。そこへ胃袋を何度も押さ れ、「げっぷじゃなくてバリウムが出てこないか心配だ・・・」と心の中で思いつつも、その言葉とともに頑張って胸にしまいこみました(笑)

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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