あらゆる子育て本や教育書で言われているのが「褒める」ですね。
また、褒めるとセットで「叱る」を挙げて、いわゆる「アメとムチ」式のノウハウを紹介しているようなものも多く見かけます。
実際に、子育て中の親御さんや、生徒指導にあたる指導者の中にも、アメとムチ式の指導をしている方は多いのでは無いでしょうか。
しかし、安易な「褒める」については、世間で言われている「効果」よりも、隠れた「デメリット」が多いと感じています。
ここでは「褒める」ことや「アメとムチ」を使いこなすことが難しい理由を見ていきましょう。
目次
アメをあげるのには、かなりの力量が必要である。
「とにかくたくさん褒めましょう」と言われますが、とにかく何でも褒めれば良いかと言えば、残念ながらそんなことはありません。
よく「褒めるとつけあがる」と心配する親御さんがいますよね。けれども、その点についてはそれほど心配はいらないです。
そもそも、お子さんがつけあがるほど褒め上手な大人は少ないです(笑)
それよりも心配なのは、次の3つの点です。
(1)アメは年齢と共に効果が無くなる
アメと言う見返りが得られると分かると、当然子供はそれを求めるようになります。
しかし、水族館の従順なイルカのように、いつも同じエサを与えれば喜んで芸を見せてくれる・・・ような子供はいませんよね。
人間と言うのは、ほしいものをどんどんエスカレートさせていくものです。
小さい頃は「お小遣い50円」で頑張るとしても、大人になればそんな金額では頑張れません。
そもそもアメと言うのは、年齢と共に効果が薄くなるシステムなのですね。
ですから、幼少期には多少まずい使い方をしてもそれなりに効果を発揮するのですが、年齢が上がっていくに連れて効果を発揮しなくなっていきます。
アメとムチに頼ってお子さんをコントロールしてきたご家庭ほど、中高生くらいからうまくいかなくなっていくわけですね。
(2)安易なアメを与えていると、子供が見返りを求めるようになる。
「勉強しなかったらご飯は抜きよ」などと言う光景はほとんど見かけなくなりましたが、これはこれで効果的なアメとムチです。
しかし、これはよくよく見ると「負のモチベーション」であり、イルカの場合とは少し異なります。
イルカのような「エサを与えれば喜んで芸を見せてくれる状態」とは、「今日もご飯が食べたいから勉強を頑張ろう!」「しっかり頑張ったら、たくさんご飯がもらえるぞ」と考えるような状態ですよね。いわば、生きるために仕事を頑張るのと似ています。
しかし、食べ物の少ない戦時中ならこうした状況もあったでしょうが、今の日本でこうした状況は少ないでしょう。
実際には、食事は当然のように食べさせてもらい、日常の面倒も十分に見てもらい、その上で何らかの願望や欲望を満足させてくれる何かを「アメ」として求めるのが今の子供です。
同じ「アメ」でも、他に食料が何もなくて、生きていくためにどうしても欠かせない「アメ」と、単に甘いものや美味しいものがほしい時の「アメ」とでは、重みも意味も全く異なりますよね。
そして、前者はそれほど副作用が大きくなく、逆に後者は副作用が多いのが特徴です。
しかし、多くのご家庭ではほとんどが後者の「アメ」の与え方をしています。
思い返してみてください。そのアメは、イルカにとってのエサや、私達大人にとって生きていく上で必要な仕事の報酬のようなものだったでしょうか。
もちろん、子供にとってそういうものであれば良いですよ。
例えば、野球をしている子供が、上達するために新しいグローブをほしがるような場合は、本人にとって重みのあるアメですよね。
反対に、「好きだから」「みんなが持っているから」と言うような安易な理由で子供がほしがっている携帯、ゲーム、マンガなどを買い与えるのは、ただの甘いものほしさのアメです。
そして「アメ」には、極めて大きな危険が1つ待ち受けています。
それこそが・・・
(3)多くの親は、アメのつもりでムチを与えている。
ムチを与えるのは、褒める以上の力量が必要である。
アメとムチを好む大人の共通点
まとめ
ここまでを通じてお伝えしたいのは、決して「アメもムチも使うな」ということではありません。
また、タイトルで「正しい使い方」とも書きましたが、いちいち正しいかどうかを気にしていてはやっていけませんから、褒めることも叱ることもどんどんしてもらえば良いと思います。
ただ、褒めればうまくいくわけでも無いですし、たとえ本人が褒めているつもりでも、それが意味のある褒め方か、むしろ逆効果の褒め方かは、冷静かつ客観的に見なければ分かるものではありません。
アメとムチにせよ、子供が使う問題集にせよ、要は使い方次第なのですね。
くれぐれも、「アメとムチさえあれば大丈夫」のように、1つに絞ることはしないでくださいね。
そして、「褒める」というのは、自然とうまくできる人は、こういったことを考えなくてもおおよそできてしまうものです。
一方で、うまくできない人には、こうやっていろいろ説明しても「自分は違う」と思っておしまい、となることが多いです。
だからこそ、こういう説教調ではなく、それこそ面と向かって「褒め」ながらお伝えしなければいけないのですが・・・(笑)
「褒める」のも「アメ」を与えるのも、世間一般に言われるほど簡単なことでは決してありません。
学校の勉強と同じで、簡単なのはもともと簡単にできる人にとってであって、もともとできない人にはとても難しいことだと思います。
ただ、「褒めるところがどこにも無い」などと言う事だけは絶対にありませんから、もしそう感じるならそれは「身近すぎて麻痺している」「感情の不和の蓄積で目が曇っている」せいです。
反抗期の対応法のワークをされてみるなどして、ぜひ今までと視点や見方を変えて、「お子さんの良い所」をそのままに褒めるようにしていってくださいね。
なお、相手を誘導するような褒め方もありますが、そういった作為的な褒め方はかなり高度です。
それをやろうとして、逆に子供たちから「裏の意図がバレバレ」「見え透いた褒め方が逆にうざい」などと、陰でボロボロに言われている親や先生たちもたくさんいます。
一足飛びで高度なことをやってもうまくいかないのは同じですから、まずは基本的なスキルを身につけていきましょうね。
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楠木塾長
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