親や先生の「勉強しなさい」の言葉に、嫌気がさしている生徒は多いでしょう。

反対に、「勉強しなさい」と言っても(言わなくても)やろうとしない子供に、困り果てている保護者も多いはずです。

 

口を酸っぱくして「勉強しなさい」と言っても、どうせやらないのですから、いっそ言わないほうが楽かもしれません。

しかし、「勉強しなさい」と言うのをやめれば、途端に自覚して勉強をするようになる・・・という夢物語が実現するのは、本当にごく低確率です。

言ってもやらない子供を、言わずに放っておいたら、今まで以上にやらなくなるほうが普通ですよね。

 

1つだけ確実に言えるのは、この「勉強しなさい」の声掛けこそが、反抗期の親子関係を悪くしてしまう最大の要因の1つになっていることです。

だからこそ、ここで一度「勉強しなさい」に込めるべき思いについて、改めて考えてみてください。

 

○ 参考:やる気のない子供をやる気にさせるのはとても難しいですよね。

やる気のない中学生の成績を上げるには?

 

どうして親は「勉強しなさい」とばかり言うのか?

よく「社会に出てから、もっと勉強しておけばよかったと後悔した」と言う大人がいますよね。

これは間違いなくその人の本音です。

 

そして、少なくない子供たちも、いつかきっと同じことを思うでしょう。

  • 勤め先で文書を書くようになって、「もっと漢字を勉強しておけばよかった」
  • 海外の旅行先や仕事相手に言葉が通じなくて苦労して、「もっと英語を勉強しておけばよかった」
  • 地方に出張したときに現地の話題になって、「もっと地理や歴史を勉強しておけばよかった」
  • 会社で同僚が論理的なプレゼンテーションをしているのを見て、「もっと数学を勉強しておけばよかった」
  • 自分が子供を育てる側になって、「もっと学生の頃に苦手教科も勉強しておけばよかった」

きっと、そんなことを思うでしょう。

これから先の長い(?)人生の中で、1度くらいはあると思います。

 

「もっとしっかり勉強しておけば、もっと良い学校に行って、もっと収入も多くて、もっと良い人生だったに違いない・・・」

そんなふうに感じている大人も多いです。

「だから、自分とは同じ失敗をしてほしくない」

そういう思いがあるからこそ、大人は子供に口を酸っぱくして言うのですね。

 

おそらく生徒の皆さんも、そんなことは分かっているでしょう。

そして、少なくない皆さんが、将来同じことを自分の子供にも言うことでしょう。

 

だから、大人の言う「勉強しなさい」には耳を貸すべき・・・とはなりません。

なぜなら、これは「2度と受験勉強をしなくて良い」立場にいる大人の勝手な言い分でもあるからです。

 

○ 参考:勉強する目的や理由も考えてみたいですね。

勉強するのは何のためか

 

当時、勉強していない人に、今のうちに勉強しておく大変さは分からない

多くの大人は、受験勉強の「苦しみや辛さ」には目を向けずに、得られる「成果」にだけ目を向けています。

そもそも「勉強しておけば良かった」と考える大人は、勉強をし足りないという自覚があるわけで、裏を返すと、本当の意味で勉強の苦労をしてきていない人がほとんどです。

「あの頃、勉強しておいて良かったなあ」と思ったことが無い人に、そう思わないで済むためにはどれだけたくさんの苦労が必要かは分からないのですね。

 

実際、勉強に多くの時間を使えば、それだけ他のことを犠牲にする場面がたくさん出てきます。

そうやって自己犠牲的に勉強を頑張っても、運悪く身を結ばないことはいくらでもあります。

後で後悔しないで済む勉強量というのが、勉強の時間を「もう少し」増やすという程度の生易しいものとは全く限りません。

 

大人が「今になって勉強しておけば良かったと思うから、お前は勉強しなさい」と言うのは、多くの場合で、本当の意味での「勉強の苦労」を実感していないからこそ出てくる安易な言葉であり、自分にできないことを他人に押しつけるだけの暴論です。

必死でやってきた人が「やっておいて良かったから、お前もやっておくべきだ」と言うのならまだしも、必死でやったことの無い人が「自分はできないけど、お前はやっておくべきだ」と言うのでは説得力も何も無いですよね。

 

「あなたのためを思って、勉強しなさいと言っているのよ」というのが親の言い分ですが、これは生徒からすれば大きなお世話に過ぎません。

子供のためを思えばこそ、つまり「親の愛情」があればこその発言ではあるのですが、そもそも愛情は押しつけるものではありません。

愛情とは与えるものであり、満たすものであって、押しつけた時点でそれは「相手ではなく、むしろ自分の願望をこそ満たす行為=エゴ」に過ぎないのです。

 

○ 参考:誰だって、役に立たないのに勉強をする気にはなれません。

勉強って役に立つの?

 

実用的な場面での「勉強しておけば良かった」は、ズレがある

それに、上のような「実際の場面で役立つ」という目的で考えると、勉強でそれを身につけるのはかなり非効率的です。

例えば、出張先の現地の話題についていくためだけに、地理や歴史の勉強を何年間もするのは不毛ですよね。

しかも、どれだけ勉強しても教科書に載っていない内容の話が出たらついていけませんから、カバーできる範囲などほんのわずかです。

 

漢字にしても、常用漢字を全て覚えていても、習わない漢字が出たらアウトです。

パソコンを使うようになったら、漢字は勝手に変換してくれます。

読めないとまずいですが、少なくとも書けないくらいなら何とかなってしまいます。

テストに出てくることわざや故事成語も、現代では使うことで逆に話が通じにくくなることもありますし、下手に使うと「古くさい」「オヤジっぽい」などと馬鹿にされることさえあります。

実社会で使われるものを覚えれば良いわけで、入試で問われるものがそのまま役立つわけではありません。

 

数学ができる人のすべてが論理的思考ができるわけでもないですよね。

計算しかできない、文章題が苦手な人もたくさんいますが、それでは論理的思考ができるはずもありません。

論理的思考力まで身につけられるレベルの勉強をしようと思ったら、受験対策に有効な方法がそのまま役立つわけではないですし、それとは別にかなりの労力が伴うものです。

そもそも、新聞やテレビなどのマスコミで情報発信をしている人のほとんどは文系出身ですが、そうしたニュースが全て論理的でないというわけでもありません。

 

英語だって、高校英語まで習っても話せない人がたくさんいる一方で、中学英語ができなかった人が現地で話せるようになるケースは山ほどあります。

英語を話せるかどうかに必要なのは、学校の成績よりも、勇気を出して英語を使えるかどうかですからね。

下手でも何でも、使っていれば必ずうまくなっていきますし、たとえ綺麗な英語でなくても通じるようにはなっていきます。

 

そもそも学校で習う勉強は「実益(実際に役立つこと)」を目的としていないのです。

良く言えば教養を身につけてより良く生きるためや、基礎学力をつけるためですし、悪く言えばエリートを選抜し育てるものです。

教養のような持った人しか分からない曖昧で間接的な実益ではなく、社会に出てすぐに役立つような直接的な実益が欲しければ、高校も普通科などやめて専門系や実業系の学校に進んだほうが良いに決まっています。

今はそこから大学に進む道もあるのですから、普通科でなければ大学で専門的に学べないとの言い訳は通じません。

小学生の勉強ならまだしも、中学生以降の勉強の全てを「直接的」に将来の実益につなげようとするのは無理があるのですね。

 

もちろん私も「この単元は実際の社会でこんなところで役立つ」などの話をしますし、それを聞けば生徒たちは納得もします。

そんな話を聞けば、きっとあなたも納得はするでしょう。

しかし、そんな例が出せるのは、広い広い勉強の範囲の中で一部だけです。

自分で話していてもうそ臭いというか、生徒がまだ社会経験が少ないから素直に聞くだけで、もし今の自分が生徒だったら絶対に納得しないだろうなと思います。

さらに親向けに付け足すと、無理に押しつけても、相手が中学生にもなると、もうやらないですよね?(笑)

 

○ 参考:勉強ができない原因も考えてみてください。

生徒が勉強できるようにならない本当の原因

 

たとえ親の言うことが正しくても、やらないのが子供

先日、新潟のU-22日本代表DFの酒井選手がドイツの名門シュツットガルトに期限付き移籍することが決まりました。

お母さんがドイツ人らしいのですが、「母も喜んでいたけど“だからドイツ語を勉強しておけばよかったのに”って怒られました」というエピソードがあったそうです。

サッカー選手ならドイツ語を使う可能性はありますし、お母さんがドイツ人であれば尚更勉強しておけば良さそうなものですが、多くの家庭と同様にそうではなかったわけです。

やっぱりいざ必要にならないとやらないものですよね。

 

ただ、可能性だけの話をすれば、サッカー選手が必要になる言語はイタリア語もスペイン語もポルトガル語もあり得るわけで、当時ドイツ語を学習することが正解だったとは分かりません。

そして、その「いざ」が来た今はお母さんを先生にしたドイツ語講座で猛特訓中らしく、「早くドイツ語を覚えて、新しい刺激を受けながら成長していきたい。今はとってもワクワクしている」と語っているほどで、そうした強いモチベーションに現地での経験があれば、あっという間にマスターしてしまうことでしょう。

 

結果的に、当時は無理に押しつけなかったお母さんが正解だったと思います。

たとえ将来実際に役立つ内容のことを親が言っていたのにも関わらず、子供が言うことを聞かなかったというのは、親の立場からすると納得がいかないと思います。

もちろん私もそう思いますし、実際の指導の際にもそういう場面はあります。

 

しかし、だからと言って無理に押しつけても、やってくれるわけでもなければ、やっても効果が上がるわけでもありませんよね。

そもそも子供時代には同じ事を多かれ少なかれ(多くは無意識に)自分の親にもしてきたわけですから、自分の子供だけを責めるのも無理があります。

それに押しつけないことで、後々「やっぱりお母さんの言うことを聞いておくべきだった」という思い(敬意?)にもつながりますしね(笑)

 

たとえ将来必要なことが分かりきっていても、まだ大人になっていない生徒には絶対にそれが分かりません。

そして何事も、やるかどうかは本人次第ですよね。

本当に大事なのは「将来必要になった時に、自ら進んで学べる姿勢」そのものではないでしょうか。

必要になる前から備えるのも大事ですが、いざ必要になった時に身につけられるほうがさらに大事です。

もちろん、その時つまずかない程度の基礎ももちろん大切ですしね。

 

生徒はもちろん、親も「勉強しておけばとにかく役に立つ」などとありもしない実益を持ち出すのではなく、勉強することで得られる力や本当のメリットを見つけてください。

そうでないと「勉強をしておいて良かった」と後になって思えるほどの勉強量はこなすエネルギーは湧いてきませんからね。

 

○ 参考:やる気を引き出すためのノウハウを学ぶのも1つの方法です。

やる気の出る勉強法 ~親子で読むメール講座~

 

「勉強しなさい」=「受験勉強しなさい」だとは限らない

生徒の皆さんからすれば、「勉強」と言えば「=受験勉強」としか思い浮かばないかもしれません。

しかし、すべての親が「受験は役に立つから」「自分が後悔しているから」というだけの理由で「勉強しなさい」と言っているわけではありません。

親が子供に「勉強しなさい」と言う理由は他にもたくさんありますし、酒井選手のお母さんが学校とは全く関係のないドイツ語の勉強を勧めてそれが的中したように、後になってみて「聞いておけば良かった・・・」と思うような「勉強しなさい」も必ずあるのですね。

 

生徒の皆さんは、そういうものが無いか耳を傾けて聞いてみてください。

保護者の方々は、そういうものをこそ教えてあげてください。

 

人生における勉強はもっと幅広いものですし、受験勉強のように一時的なものではありません。

本当の意味での「勉強する意味」、そして「勉強の価値や楽しさ」を知ることができれば、あなたの人生はより実りあるものとなるでしょう。

なぜなら、人生における「勉強」とは一生続いていくものだからですね。

 

そして、あなたの実りある幸福な人生こそが、あなたのご両親や保護者の方が求める、最大の望みなのです。

親から精神的に自立しようとする気持ちは大人になる上でとても大切なことですが、そういった親の気持ちをしっかりと受け止めることも人として大切なことです。

そんな勉強をしていってくださいね。

 

○ 参考:いっそ勉強を好きになれたら、全てがスムーズに進みます。

勉強を好きになる方法

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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