2018年問題とは、「日本の18歳の人口が2018年頃から減り始め、大学進学者が大きく減っていく」問題ですね。
先々週の少子化の話に関連して、いただいたコメントの中にこの言葉がありましたから、簡単にご紹介したいと思います。
もともと、18歳人口(18歳以下の人口では無い)は1992年の205万人から2009年の121万人へ半分近くに激減していたのですが、大学進学率も27%から50%と2倍近くに増えたことで、進学者自体は逆に増加していました。
このあたりは学習塾の通塾者数の話ともつながりますね。
その後、2017年までは横ばいが続いていたのですが、2018年から再び減少に転じて、2031年には104万人に減ります。
大学進学者数で言うと、2018年の予想が65万人なのに対し、2031年が48万人と、約4分の1も減少すると予想されています。
そういうわけで、大学関係者が色めき立っているわけですね。
ただ、実のところ大学は現状でも相当厳しく、平成26年度に定員割れした私立大学が45.8%もあるほどです。
こういったところはすでに経営的にも苦しいわけで、ここからのさらなる減少に耐えられるかと言えば、厳しいでしょう。
具体的には、入学者定員800人以上(学生数はその4倍以上)の規模の大きい大学は定員超えをし、それ以下の規模の小さい大学が定員割れとなっていますから、小さな大学ほどもともと経営基盤が弱いこともあり、軒並み倒産の危険性も囁かれています。
生徒数に関しては、それこそ1992年頃から大して変わらない状況が続いている中で、新設大学や新設学部は増え続けてきたのですから、統廃合は避けられないでしょうね。
そもそも、人口が激減している中で大学進学者数が増えたところで、優秀な層の生徒数が増えるわけでは無いですから、基本的には「今まで大学に行きたくても行けなかった学力レベル層」が大学に進むようになるに過ぎず、平均的な学生のレベルはどうしても下がっていきます。
長年続いた不況による国公立人気の影響もあり、私立の地盤沈下は深刻で、昔はブランドだった有名私大でも今では(イメージはともかく実情は)見る影も無いですし、最難関と言われる私大ですら、人気の無い学部の凋落は著しいです。
一部の難関大学の、一部の人気学部を除けば、偏差値が昔よりも格段に下がっているのは偏差値一覧を見るだけで一目瞭然ですが、偏差値が必要無い入試形式が増えたことで、実際の入試のハードルはそれよりさらに下がっているのが現実ですね。
そのため、就職活動などで言えば、昔は「**大学卒」が肩書になったわけですが、今は「**大学**学部**学科」の「一般入試か、それとも推薦やAO入試か」まで見て判断される状況になっています。
有名大学の不人気学部を狙って入って、「私は**大学卒だ」と威張れる時代はもう完全に終わっていますから、やはり「肩書」では無く「実力」を、「受験で測れる学力」では無く「社会に通用する学力」を身につけるようにしていきたいものです。
○ 参考:本当に育てるべき力を育てるためには?
せっかくですから、大学入試の易化について、もう少し数字と一緒に触れておきましょう。
1992年の18歳人口は205万人いて、そのうち志願者が92万人、実際の入学者数は54万人で、大学進学率は約26%でした。(ついでに、合格率は約59%ですね)
これが2009年になると、18歳人口は121万人いて、そのうち志願者が67万人、実際の入学者数は61万人で、大学進学率は約50%でした。(こちらの合格率は約91%ですね)
昔は短大への進学者が多かったこともありますが、大雑把に言って「昔は18歳人口の上位4分の1しか大学生になれなかったのに対し、今は半分が大学生になれる状況」だと言えます。
高校進学率が1992年からずっと95%以上であることを考えると、昔は「中学校の成績でオール4以上をとれるくらいの力が無いと大学進学は難しい」状況だったのが、今は「オール3でも大学に進学できてしまう」状況とも言えます。
しかし、今のオール3の生徒の現実を見ると、中学校内容どころか小学校内容も怪しい生徒がたくさんいるわけです。
それなのに、高校で文理選択の名のもとに半分近くを免除され、場合によっては筆記試験すら受けなくても高校や大学へは進めてしまう現実があります。
ついでに、塾ではできないところに戻るような手間と時間のかかることはせず、詰め込み式で受験だけ突破させてしまうのですから、大学生(新社会人)たちの学力低下が叫ばれるのも当然と言えば当然です。
さらに現実は、上記のように定員割れのボーダーフリー大学だらけですし、AO入試・推薦入試による抜け道もあるため、オール3に全く届かない学力の生徒でも、いくらでも大学に進学できてしまう状況です。
例えば、中学校でオール2の生徒ばかりが集まる高校でも、その高校では同じレベルの生徒ばかりが集まる以上、必然的にその中からオール4や5のような生徒が生まれることになり、推薦入試やAO入試で筆記試験を受けることも無く・・・などともなるわけですね。
結果的に、入学後の学力が足りずに小中学生にするような内容の補習クラスを設置する大学なども現れていて、それはそれで必要なことだと思いますが、大学のもともとの存在意義(=高等教育の場)を考えるともはや末期状態です。
ちなみに、一昔前は大学の「テーマパーク化」と言われましたが、今は下位の大学が「補習塾化」し、上位の大学は「就職予備校化」している状況です。
テーマパーク時代よりも大学生はずっと真面目に頑張るようになった印象ですが、スタート地点が低すぎるせいで、学ぶ内容のレベルが低くなってしまっているのは痛い点です。
また、高校で進学実績が重視されているように、大学でも就職実績が重視されているため、教養や実学としての勉強よりも、就職活動支援や会社に入ってすぐに役立つノウハウ的な内容が重視されがちで、大学のあり方も変わってきています。
すぐに役立つノウハウは、すぐに役に立たなくなるものですよね。
そればかり偏って教えるのは問題ですし、それを学ぶのが専門学校やその他の機関であったのですから、そういう意味でも今の大学の迷走感は強いです。
昔は大卒と言えば、人間性や仕事の能力はともかく、少なくとも「学力」についてはかなりの信頼がおけたものですが、今や最低限の学力すら保証してくれません。
それで「そんな意味の無い大学なら行かない」となるのか、「自分はそうならないようにしっかり学ぶ」となるのかは人によりけりで正解はありませんが、昔のイメージのまま「大卒」という肩書に憧れて、ただ漫然と通わせるのは避けたいです。
また、昔のように「大学=高等教育を受ける場」という位置づけでは無くなってきていますから、「大学と言ったら勉強をするところ」という価値観にとらわれず、広い視野で「自分は大学で何を学ぶのか(得るのか)」をちゃんと考えさせ、その上で進ませるようにしてあげたいものですね。
(2014年時点の記事です。最新の情報はメールマガジン内で配信するようにしています)
○ 参考:高校入試に関する記事はこちら。
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