巷にはいろいろな英語の勉強法が溢れています。

それぞれにメリットとデメリットがありますから、どれが良いとも、悪いとも言い切ることはできません。

ただ、英語の勉強法を考える際には、どうも根本の大事な部分をごちゃごちゃにしている人が多すぎます。

学ぶ側がそうなのはしかた無いのですが、教える側もごちゃごちゃな人が多いです。

(指導する側に、英語の知識や自信が不足しているせいもあります)

 

「子供にはぜひ英語を身につけさせたい!」

そうお考えの親御さんは、以下のことを頭に置いてみてくださいね。

 

○ 参考:中学英語の勉強法のポイントはこちら

中学英語の勉強法 ~良い方法&悪い方法~

 

英語の勉強法は大別すると3つある

英語の勉強で身につけるべき英語力には、大きく分けて次の3つがあります。

これは単純に、リーディング力、リスニング力、ライティング力、表現力、単語力・・・といった、個別の力のことではありません。

また、「単語が命だ!」「英語は文型が全てだ!」「英語は文脈の中でこそ学ぶべきだ!」といった思想の違いでもありません。

ましてやパラグラフリーディング、スラッシュリーディングといった個別の技法の話でもありません。

 

ここで押さえてほしいのは、英語学習の目標地点による違いです。

 

  • (1)受験で役立つ英語力
  • (2)将来、旅行やコミュニケーションで使える英語力
  • (3)将来、仕事や年収面でのメリットがある英語力

 

何やら同じように感じるかもしれませんが、この3つのゴール地点は全く別物です。

そのため、身につけるための道筋(=勉強法)も、それぞれで大きく異なります。

 

いったいどの力がほしいのか?

まずはこれをはっきりさせてください。

 

○ 参考:受験でも日常でも大切な英単語の勉強法はこちら。

中学英語 英単語の覚え方

 

(1)受験で役立つ英語力

受験で必要な英語力とは、すなわち「高校入試や大学入試のテストが正解できる力」ですよね。

少しくらい発音が良くても、たとえ原文で小説が読めても、入試で点数が取れなければ、受験においては何の意味もありません。

 

こう言うと、何やら偏った力のような気がするかもしれませんが、実はそうとも限りません。

なぜなら、実はこれらの力は、大学に入った後の「英語で論文が読み書きできる英語力」へとつながっているからですね。

 

高校、大学と進んだ先には、論文を書いたり読んだりして深く学ぶ世界が待っています。(そこまで深く学ばないにしても、少なくとも卒業論文は誰もが通過する道です)

その時、今のグローバル化した世界の中で、日本語の論文しか読み書きできないのと、世界標準となっている英語の論文を読み書きできるのとでは、大変な差になってくるのは簡単に想像できるでしょう。

大学側としても、まさにそういった力を持った生徒や、これからそういった力をつけるための基礎を持った生徒がほしいわけで、大学受験はまさにそれを選抜する役目を果たしているわけですね。

 

こういった世界で求められるのは、分かりやすく言うと、読み書き中心、文法中心の英語力です。

 

ただし、これがネイティブに通じる英語と一致していれば良いのですが、今は残念ながらそうなってはいません。

例えば、「センター試験を外国人(それもかなり賢い人)に解かせたら、×だらけだった」というのは有名な話ですよね。

今のセンターはだいぶ実用的な内容も増えてきていますが、それ以外の大学入試も含めてみていくと、やはりそういった傾向はいまだに強く、同様のことを指摘した本や記事は、それこそ枚挙に暇がありません。

 

実際、英語で日常会話をする際には、高校で習う英語などほとんど使いません。

例えば、関係代名詞を使って話すだけでも怪訝な顔をされてしまうほどで、中学レベルの関係代名詞ですら日常会話ではほとんど出てきません。

高校レベルの英文法は、完全に現実とはかけ離れているのですね。

 

それでは、そんな高度(難解?無用?)なものをどうして習うのでしょうか?

それが上に書いた「大学進学後に、論文(その他、難解な文章や古い文章など、いわゆる学問的な文章も含みます)を英語で読み書きできるようにするため」です。

もともと大学入試とは、大学入学にふさわしいかを見るためのテストですから、当然と言えば当然ですよね。

 

そして、今の時代、学術論文や研究論文はほとんど全て英語です。

日本語でしか論文が書けないような研究者は扱いも低くなりますし、インターネットによって過去の論文の検索なども英語で行われるようになり、研究者にとっても英語はいわば必須技能と言えます。

 

ただし、繰り返しになりますが、この英語力はそういった道に進まない限りほとんど役には立ちません。

日本人が中学~高校と6年も英語を習っているのに英語が話せるようにならないのは、こういった「目標地点の違い」が根本原因にあるのですね。

 

○ 参考:高校受験に向けた具体的な勉強法はこちら

高校受験 英語の勉強法(公立高校入試対策)

 

(2)将来、旅行やコミュニケーションで使える英語力

近年の日本では小学校英語が導入されています。

そして、その指導は「英会話主体」になっています。

実際に英語を使う中で、楽しみながら身につけようという趣旨自体は、素晴らしいことだと思います。

 

ところで、大学受験で求められるのは「英語で論文を読み書きできるだけの英語力」でしたね。

そうすると、高校の指導目標が「高いレベルで読み書きできる力」となりますが、小学校の指導目標は「日常会話ができる力」となります。

つまり、目指しているところが全く別のところで、これでは生徒たちが混乱するのもしかたありません(苦笑)

 

よく「小難しい文法英語はいいから、実際に使える英語力がほしい」と言う人がいます。

実際に、英語は「言語」ですから、相手と会話が通じなければ意味がありませんよね。

 

  • 有名大学に行って英検も持ち、そのくせ海外に行ったら全く話せない人。
  • 高卒だけど、留学経験があって、現地人との会話もペラペラの人。

どちらが「英語を使いこなせている」かと言えば、後者だと言えます。

 

もちろん、後者のほうが社会的に評価が高くて得をするという意味ではありませんよ。

しかし、少なくとも英語を本来の役目である「意思伝達の道具」として有効に使えているのは間違いないですよね。

 

こういう英語力がほしいなら、文法中心の高校英語ではいけません。

それよりも音読やリスニングを中心にし、目や手だけでなく、耳や口で英語を使わなければいけません。

そして、本当に会話力がほしいならば、読んだり書いたりではなく、何よりも「生きた英語に触れる」のが一番です。

 

最近は英会話や留学だけでなく、ネットを使った外国人との格安会話講座のようなものもできています。

他にも、洋画やドラマのDVDなど、生の英語に触れることのできる英語の教材はたくさんあります。

方法は何でも良いですが、英語が話せる(できれば日本語の話せない海外の)人と英語を使ってコミュニケーションするのが一番の近道でしょう。

 

反対に、英会話のできない英語の先生(かなり多いですが・・・)に習うのは(1)の英語力だけにしておきましょう。

文法には詳しいですが、英語の感覚や発音力が無いですから、英会話習得にはマイナスのほうが多いです。

(中学校ならALTの先生を有効活用することですね)

 

そして、学校や塾の先生を見ると分かりますが、(1)はできるけど(2)は駄目という人はかなり多いですよね。

つまり、この2つの力は全く別物だということです。

 

別に(1)だけだと駄目だとか、(2)があるから優れているなどと言うことは全くありません。

どちらもそれぞれ大切な力ですし、最終的にはどちらもできたほうが良いに決まっていますからね。

ここで重要なのは、どちらが大切かという議論ではなく、自分がどちらの力を身につけたいのかという視点のほうです。

そこが定まっていないと、バラバラの方法論を取り入れることになってしまい、結果的に非効率なやり方をして、ちゃんと身につかないということになりやすいのですね。

 

○ 参考:英語のセンスに関する記事はこちら

英語のセンスが無い・・・中学英語にセンスは必要か?

 

(3)将来、仕事や年収面でのメリットがある英語力

よく「今は英語の時代だ」「英語ができるとキャリアが上がって、年収にも有利だ」と言われます。

しかし、勘違いしないでほしいのですが、ここで言う英語力は(1)でも(2)でもありません。

高校レベルの英文法など、社会に出てからはほとんど使いませんし、ましてや大学以上のレベルの英文法は、その道に進む人しか使わないです。(ただし、その道に進む人には必須ですよ)

 

また、「日常英会話ができれば有利だ」と思っている人もいますが、普通の日常会話ができても大して有利ではありません。

これは、世界で活躍するレベルの人からすれば「そんなものはできて当然」であり、むしろ「それだけでは足りない」のが現実です。

逆に、日本国内の普通の企業で働くなら、英語を使う機会そのものがほとんどありませんから、有利でも何でもありません。

 

社会に出てから求められる、上の2つとは異なる英語力は主に2つあります。

 

TOEICやTOEFLなどの検定試験のための英語力

1つは有名なTOEICやTOEFLなどのテストです。

これは単純に入社試験や昇進試験の最低条件にされていたり、留学の際に必須だったりするもので、あなたがそういうものを必要とする道に進むなら持っておいたほうが得です。

(しかし、そういうのを評価しない会社であれば、いくら持っていても自己満足にしかなりません)

 

ビジネスの現場で求められる英語力

そして、もう1つはビジネス英会話です。

これは通常の英会話だけでなく、きちんとビジネスで通用する英会話力ですね。

例えば日本の会社員が「この商品はかなりお買い得なのですが、いかがですか?」と言うところを、「てかぁ~、これってそんなに高くなぃと思ぅんだけどぉ、マヂでぃらなぃ?」と言っていたら、即日クビですよね?(笑)

ちょっとこれは極端な例ですが、英語でもビジネスなどのフォーマルな世界では、それに合った言葉遣いや表現が求められます。

 

また、日本語でもそうですが、いくら会話自体がペラペラでも、業界特有の専門用語や言い回しが出てくると、一気に話が通じなくなってしまいますよね。

しかし、特殊な専門用語は、別の業界だと全く使われないものであり、あくまでもその業界にいる間しか用のないものです。

そういった業界特有の専門用語や言い回しに関する知識もまた、ここで言う「ビジネス英会話」の力に含まれることになります。

 

ビジネスに通用する英語力を身につけるという発想

あとは、英語が正しいかどうかだけで無く、相手の意見を正しく理解した上で論理的に説得したり、円滑なコミュニケーションで深い信頼関係を築いたりといった力も要求されます。

これらの中には、日常会話で身につく力もありますが、例えば交渉力のような、あくまでもビジネスの現場でしか求められない力もあって、やはりこれはこれで身につけることが必要です。

 

ですから、(3)の意味で英語力を身につけたいなら、こういったことを学ばないといけません。

こうした英語力は、普段の会話表現だけでなくビジネス特有の言い回しなどを学ぶこと、その業界特有の単語や専門用語を学ぶこと、そして英語かどうか以前に根本的なコミュニケーション能力を磨くことが要求されます。

一方で、TOEICやTOEFLなどの検定試験については、もちろんそれ専用の勉強がいります。

こちらについては、実際の英語力があるかどうかや、仕事ができるかどうかとは別の話として、「一定以上の成績が無いと出世させない(またはクビ)」という意味不明な運用をする会社が多いです。

ただ、いくら意味不明でも、それが評価基準になっている以上はしかたない・・・というあたり、まさに学校の内申点とそっくりですが(笑)、会社の中でもそういったことはあるということですね。

いずれにせよ、「将来、社会に出てからの評価や年収を高めたい」と思っているなら、目標にすべきはこの(3)の力となるわけですね。

 

○ 参考:家庭で英作文の力をつけるにはこちら

中学英語 家庭でする英作文の勉強法

 

どの力を優先して身につけるべきか?

「どの力を優先して身につけるべきか?」は、結局のところ本人が「どの力を身につけたいか」次第です。

ただ、生徒が大人になっていく過程で、実際に求められる順番という意味で言うと、(2)→(1)→(3)となるでしょうか。

 

そのため、相手が高校生で、大学受験を目指しているような生徒も場合は、(1)が最優先となってきます。

しかし、中学の段階では、実業高校や専門学校に進む生徒もいますし、将来的に日本の大学ではなく海外の大学を目指す高校に進む生徒もいます。

ですから、中学段階では、勝手に(1)に絞ることなく、(2)や(3)の可能性も含めて指導することが、指導者側としては必要なことだと思います。

 

その点、まだ中学段階だと言うのに、高校の先取りとばかりに一律で(1)に偏った指導をする塾や先生が多いのは悩みどころですね。

だからと言って、学校だと(1)(2)(3)のどれでも無いような微妙な指導をするところも多いため、これはこれで悩みどころです。

いずれにしても、中学生を持つ親としては、一言で「英語力」と言っても、こうしたギャップがあるということを頭に入れておいて損は無いと思います。

 

ちなみに(2)の英会話について言うと、中2レベルの文法があれば十分です。

あえて細かい話を抜きにして言うなら・・・本当に英会話を身につけたいのであれば、中2までの文法を習った後は、ネイティブの中に入ってどんどん会話するのが一番ですね。

反対に、幼児教育を含めて、いくら早い段階から教えたところで、生の英語に触れなければ、ハリボテのような英語力しか身につきません。

また、仮に早い段階から生の英語に触れさせたとしても、その後も継続的に触れさせることが重要で、いざ使う機会がなくなると、英語力はすぐに劣化していきます。

 

そしてもう1つ、世の中には英語以上に学ぶべきこともたくさんあることを忘れないでください。

英語力は、必要な人にはかなり役に立ちますが、そうでない人には使えなくても何とでもなってしまうのが現実です。

あらゆる全ての物事を学ぶことなどできませんから、人生においては、どれを学んでどれを学ばないかを選択するのも大事なことです。

 

だからと言って、「英語なんかいらない」という極論を言うつもりは全くありませんよ。

そもそも世の中に不要な学びなど無いわけで、学べるなら無限に学んだほうが良いに決まっています。

ただ、現実的にそれが不可能だからこそ、「何から学んでいくか」や「何を学んで、何を捨てるか」を考えることが大切になってくるわけですね。

 

少なくとも「何も考えずに安易に選択する」のは、賢いとは言えません。

この記事でお伝えしたいのも、その「選択の基準」なのですね。

ぜひ、少しでも参考にしていただければ幸いです。

 

○ 参考:英語で塾を選ぶ際の基準のヒントはこちらも

塾でプロに教われば英語も伸びるか?

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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