算数や数学で「途中式を書きなさい!」とは、よく言われることですよね。

 

途中式を書くことで、計算の過程がはっきり分かりますし、どこを間違えたかも後で見直しがしやすいです。

そのため、親御さんだけでなく、学校や塾の先生もかなり多くも、口を揃えて「途中式は書かないといけません」と生徒に言っています。

しかし、何度言っても、書かない生徒はなかなか書くようにならないのが現実で、何とも悩ましいところですよね。

 

一方で、「計算は答えがあっていれば良い」「途中式を書くと計算が遅くなる」という意見もあります。

意味もわからずに答えだけが合っているのはどうかと思いますが、途中式が無くても速く正確に計算できる生徒もたくさんいます。

そして反対に、きちんと丁寧に途中式を書くのに、計算間違いがちっとも減らない生徒がたくさんいるのも現実です。

 

それでは、一体どうするのが一番良いのでしょう?

 

答えは「生徒の状況によって変わる」です。

 

これだけでは随分と曖昧な答えですよね(笑)

事実だからしかたないのですが、さすがに分かりにくいでしょうから、いくつかのポイントを押さえながら書いてみましょう。

 

途中式を書かないから計算間違いが多い?

計算ミスをする生徒に対して「途中式を面倒くさがらずに書きなさい」という先生がとても多いです。

ネットを検索してもそう書いてあるところが多いですし、実際に学校や塾でもそう指導されるケースがほとんとでしょう。

しかし、実はこれが大間違いであると言ったら、すんなりとうなずけるでしょうか?

 

計算ミスを減らすために途中式を書かせるセンスのなさ

計算が苦手な子供は、当然のことながら計算が遅くてミスも多いものですよね。

そんな子供に対して「途中式を丁寧に書きなさい」と言う指導が定番なわけですが、これは非常にセンスが悪いです。

 

何しろ、ただでさえ計算するのが面倒で嫌いなのに、さらにやることを増やして面倒さをアップすれば、ますます嫌がるに決まっていますよね。

料理が苦手で、できればしたくないと思っている人に、「面倒がらずに丁寧に出汁を取ったり下ごしらえをしたりすると美味しくできるよ」と言ったら、「よし、やろう!」となる・・・はずが無いですよね(笑)

当たり前のことなのに、なぜか計算になるとそれと同じことを平気で言ってしまうのが不思議なところです。

 

それに、「途中式を書くことでミスが減る」とばかり言いますが、実際に書かせてみると、その量が増えた途中式でミスが出るという現実もあります。

何より、計算が苦手な子供であればあるほど「途中式をちゃんと書きなさい」と言われた時には、分かりやすく嫌そうな反応を返してくれます。

そんな厳しい反応を目の前で見せつけられてなお「面倒がらずに書きなさい」と言える教師の無神経さには呆れ・・でなく、尊敬の念すら覚えなくもありません(笑)

 

いずれにしても、二言目には「ちゃんと途中式を書きなさい」としか言わない先生たちは、あまり子供のことを見ていないのだなと思ってしまいます。

 

一方で、簡単な計算ミスを「ケアレスミスだ」と言い張る生徒はとても多いです。

これは生徒だけではなく、保護者や教師にも多いですよね。

しかし、そのうちのほとんどは「ケアレス(=注意不足)」でなく、単なる「計算力不足」によるミスだと言われたらどうでしょう?

 

本当にケアレスミスなのか?

本来のケアレスミスとは、注意力不足や緊張や焦りなどによって起こるものですよね。

そのため、問題の難易度に関わらずランダムに起こるのが普通です。

一方、計算力が不足している生徒は、もともと出題者が「ここは間違えるだろうな」と思っているところで間違えます。

 

ところで、お子さんのケアレスミスが、どういった間違え方をしているか確認してみてください。

いつも似たような間違い方をしていたり、前と同じ問題を間違えていたりしていないでしょうか?

もっと言えば、出題者がそこで間違えるだろうと思って出している、多くの生徒が間違えるような箇所で間違えてはいないでしょうか?

 

もしも、間違え方がランダムではなく傾向がある場合、それはケアレスミス(=注意力不足)ではなく、単なるミス(=実力不足)の可能性が高くなります。

特に、上に書いたような「出題者がそこで間違えるだろうと思って出している箇所」で間違えているのは、狙い通りに間違えているわけですから、これはもう完全にケアレスミスとは呼べません。

こういったあたり、生徒や保護者の視点だけだと、あまり違いが分からないかもしれませんが、プロから見れば全くの別物であり、きちんと分けて指導することがとても大切です。

 

参考:テストのケアレスミスへの対策についてはこちらも

ケアレスミス対策(減らし方、なくし方)

 

途中式を書かせて改善するケースとしないケース

以上のように、ケアレスミス(=注意力不足)と、単なるミス(=実力不足)は全くの別物です。

そして、生徒の計算間違いのうち「ケアレスミス」と「単なるミス」では、後者のほうが数百倍多いです。

生徒だけでなく、親や先生が「ケアレスミスだね」と言っているものの中にも、かなり多くの「単なるミス」が混ざっているのですね。

 

さて、ここで本題の「途中式は書くべきか?」です。

実は、対象が純粋な「ケアレスミス」であれば、途中式を書かせることは、そこそこ効果があります。

残念ながら、それ「だけ」で改善するほど簡単ではないですが、とりあえず「効果的な方法の1つ」くらいのことは言えます。

(ただし、途中式を書かせる方法が合わない生徒もいますから、その場合は違う訓練をしたほうが良いです)

 

しかし、実力不足からくるミスの場合は、単純に途中式を書かせるだけでは克服できません。

もちろん、途中式を書かせる中で計算力そのものを上げるタイプの指導もありますが、途中式を書きさえすれば計算力が伸びるような言い方は完全に間違いです。

少なくとも、ご家庭でただただ機械的に途中式を書かせるようなことをするのは、全く意味が無いと思ったほうが良いでしょう。

 

途中式の、ここを踏まえたアドバイスや指導になっているか?

それでは、肝心の「途中式を書きなさい!!」と言っている先生の指導はどうなっているでしょうか?

以上からも分かるように、お子さんのミスの原因が、実力不足ではなく注意力不足のほうであり、しかも途中式を書かせる方式が合うタイプだ・・・という診断を踏まえて、「途中式を書きなさい」と言ってくれているなら安心です。

しかし、「計算ミスが多い」→「途中式を書きなさい!」といった、条件反射的なワンパターンの指導ばかりしている先生もかなり多いのが現実です。

少なくとも、上の2つの間違いを分けて指導してくれていないようであれば、その先生は指導力不足だと思ったほうが良いでしょう。

 

ちなみに、ちゃんとしたプロが「途中式を書きなさい」と言う時には、必ず「その子にとって、どういう書き方が必要か」もセットで伝えます。

途中式をまともに書いたことの無い生徒に、ただ「書きなさい」と言うだけでは、正しく書けるはずが無いですよね。

それに、途中式の書き方は無限にあるわけで、そこをしっかりと絞ってあげないと、生徒のほうも困ってしまいます。

つまり、プロは「途中式を書きなさい」などとは言わず、「こういうふうに途中式を書けば、計算間違いが無くなるよ」「計算間違いを減らすためには、こういうふうに途中式を書くと良いよ」と言ってくれるわけですね。

そういったあたりから、先生の指導力の信頼性を見極めてみるのも良いでしょう。

 

参考:計算力アップが目的ならこちらの記事も参照を

中学の数学で計算力アップのために必要なこと

 

途中式を書いたほうが、結果的に速い?

親や先生の中には「途中式を書いたほうが結果的に速くなる」と言って、生徒に途中式を書かせる人がいます。

これについては、当てはまる生徒と当てはまらない生徒がはっきりと分かれるため、誰でも彼でもに言うのはやめておきましょう。

 

途中式を省略したほうが速いに決まっている

普通に考えたら、途中式を書くよりも、書かないほうが速いに決まっていますよね?

何しろ、書く文字数が増えれば増えるほど時間がかかるのですから、当然と言えば当然です。

実際に、算数が数学が得意で計算が速い生徒ほど、途中式を省略するものです

 

例1:途中式を丁寧に書く生徒

4+(7-6÷3)×2 = 4+(7-2)×2 = 3+5×2 = 4+10 = 14

 

例2:計算の速い生徒

4+(7-6÷3)×2 = 4+5×2 = 14

 

省略のしかたはいろいろありますが、どうやったところで「書く時間」の分だけ下のほうが速いです。

中には全てを暗算でして、答えだけを書く生徒もいます。

横着なようですが、それが合ってさえいれば最も効率が良いです。

 

しかし、話はここでは終わりません。

 

途中式を省略することで遅くなる生徒もいる

途中式を省略することで、逆に計算が遅くなってしまう生徒がいます。

これは「中にはそういう生徒もいる」と言うよりは「一定以上の計算力が無い生徒のほとんどはそう」と言ったほうが良いかもしれません。

簡潔に言うと、途中式を省略することのメリットよりも、途中式を書かないデメリットのほうが上回ってしまうのですね。

 

例えば、省略することを優先して手が止まる生徒がいます。

計算を飛ばすのは、そのぶんを頭の中で解いているわけですが、頭の中の操作が増えるほど、何をどこまでやったか忘れやすくなります。

そうすると、頭の中で考え直すことも多くなり、答えが出るまで無駄な時間がかかります。

 

他にも、目の前の計算に意識がいって、他のことを忘れる生徒もいます。

上の例で言うと、(7-6÷3)の割り算よりも先に「7-6」を計算してしまうなどですね。

同様に、頭の中の操作が増えることで、無意識に違う数字に置き換わってしまう生徒もいます。

答案用紙を見ていると、あるはずの無い記号や数字がいきなり出現するのは、よくあることですよね。

 

いくら速く計算できても、こうしてミスが増えてしまっては元も子もありません。

また、ミスにまでは至らないまでも、「あれ、なんだっけ?」と思い出したり、書き直したりしていては、結果的に遠回りです。

普通ならば、途中式は少ないほうが速いに決まっていますが、途中式の正しい省略のしかたが分かっていない生徒は、逆に遅くなることもあるのですね。

 

途中式にも正しい省略のしかたがある

途中式を省略する場合、もともと計算力の無い生徒ほどミスが増える一方で、計算力のある生徒が省略してもミスは増えません。

一定の計算力があれば、多少省略するかしないかは問題では無いですし、もっと言えば「正確さに影響しない範囲で、適切に省略できる」のが本当の計算力です。

 

実際に見ていると、本当に計算力のある生徒は、問題が難しくなると必要に応じて途中式を書くようになります。

反対に、計算力の無い生徒は、問題の難易度に関わらず、いつでも多いまま(少ないまま)です。

 

実はこの差が、高校に進んでから出てくる複雑な計算をミス無く正確に解けるかどうかの差にもつながります。

途中式は「いつも必ず書く」ことが大切なのでも無ければ、「書かなくても良い」ものでもありません。

「必要に応じて書くべき時に書ける」ことが大切なのですね。

 

途中式は、どういう練習をさせるべきか?

ここまで書いたように、「途中式を書かなくても合っていれば良い」は、計算力のある生徒については「その通り」です。

こうした生徒に「何がなんでも、とにかく途中式を書くべきだ」という考え方、指導は間違いです。

書くべき時に書ける生徒には何も言う必要は無いですし、書くべき時に書けないような生徒はきちんと書けるように練習しておくのが正しい勉強法(指導法)です。

(もちろん最初から書くべき時にだけ、正しい書き方で書けるような生徒は非常に少ないため、多くは練習・指導が必要になります)

 

一方で、計算力の無い生徒に向けて、「途中式は書かなくても良い」などと言うのもいけません。

 

例えば、小学校で習うような「1+3 = ?」では、途中式など絶対に必要無いですよね。

これが「5+8×(2+4) = ?」になると、生徒によっては途中式を書いたほうが間違いが減ります。

 

中学生で言うと、現時点で「方程式 x-2 = 4 を解け」が暗算で正確にできる生徒に、移項などの途中式を書かせるのも意味がありません。

しかし、これが分数の混じった方程式になってくると、途中式はほぼ必須になってきます。

 

このように学年が進むにしたがって、計算は長く複雑になっていきますから、途中式を書くことの重要性は増していきます。

しかし、だからと言って、必ず必要というわけでもありませんし、長く複雑になるからこそ、省略できるならそれに越したことはありません。(何よりも、テストの時間は限られています)

あくまでも、生徒の力に沿った勉強法(指導法)こそが大切なのですね。

 

参考:生徒に合った勉強法の見つけ方はこちらも

絶対に成績の上がる勉強法の見つけ方

正しい勉強法の選び方 ~成績アップのための3つの勉強法~

 

家庭で教える時に気をつけたいこと

まず、低学年の頃の印象や、見かけの計算力のある無しだけで判断するのは避けましょう。

 

いくら九九ができても方程式には関係が無いように、計算力と一口に言っても、小学校・中学校・高校とで、求められる力の中身はどんどん変わっていきます。

そのため、今習っている計算がスラスラできるだけの力を持っている生徒でも、将来出てくる複雑な計算に必要な力は足りていない状態ということは普通にあります。

ここを気づかずに上の学年に進んでしまうと、内容が難しくなってくるどこかの単元で急にできなくなるという現象が起こりますから注意が必要です。

(もちろんその逆に、今の計算はそこまで速くなくても、先々の計算に必要な力をしっかりつけていて、十分な基礎を身に着けていると言える状態の生徒もいます)

 

また、親御さんが家庭で教えるような場合には、大人と子供の感覚の違いにも注意したいです。

 

大人の感覚で「書くべき途中式」と、まだ習熟過程の生徒にとって「書くべき途中式」は、必ずしも一致しません。

例えば、一般的な先生がよくやる指導法の1つとして、自分がしている計算方法や模範解答のような理想的な計算方法を、テキストや黒板などで見せた上で、生徒に同じようにさせるというのがあります。

一方、私が教える時は、そういった理想の方法はいったん横に置いて、その生徒にとって今の段階で最適な計算方法を学ばせることを意識しています・・・が、普通そんなことはしませんよね。

しかし、多くの大人が持っている感覚は、様々な過程を経た後のゴール地点のものですから、それを途中段階にいる生徒にそのまま与えても、途中の大事な要素をいくつも抜かしてしまうことになりかねません。

これは算数や数学が得意な親御さんほど陥りやすいミスですから注意してみてください。

 

反対に、数学センスのある子供に、文系発想の親が無理やり「途中式を書きなさい!」と強制することで、結果的に子供の伸びしろを壊しているようなケースもあります。

生徒が頭の中で1ステップで終えている計算を、こちらの感覚で2ステップ、3ステップの式を書かせようなどとするのは、指導になっていないどころか、もはや妨害行為です(笑)

センスの良いやり方に合わせるならまだしも、センスの悪いやり方に合わせるのはあってはならないことで、少なくとも「途中式」に関しては、センスの良い生徒ほど、部分的にしか書く必要がなくなっていくものであることを、忘れないようにしたいものです。

 

生徒も親も先生も、個々の生徒に合わせた勉強法(指導法)を選択していってくださいね。

 

参考:途中式と並んで、大人の思い込みを押しつけがちな「テスト直し」のウソはこちら

テスト直しの正しいやり方

 

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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