高校入試に向けて、英語を効率的に勉強するために
高校受験に向けた英語の勉強法というと、「英単語」→「英文法」→「長文」といった順序を奨めるものがとても多いですよね。
試しに、他の高校受験英語の勉強法のサイトを検索して見てもらうと、大抵どこも口を揃えてそうなっていることが分かると思います(笑)
しかし、英語の苦手な生徒が、1冊の単語帳なり文法書なりを完璧にすることができるでしょうか?
実際に、英語を苦手とする大勢の生徒を教えてきた人間なら簡単に分かることですが、「英単語と英文法を完璧にしてから次に進む」などというのは、現実を無視した単なる理想論に過ぎません。
もちろん、「長文を練習しようと思っても、英文法が分からないとまともに読み取れない」「英文法を学ぼうと思っても、英単語の意味が分からなければ手がつけられない」「だから、英単語→英文法→長文の順序で学んでいこう」という理屈はそのとおりです。
しかしだからと言って、英語の苦手な生徒に単語帳を1冊与えて、「これを覚えましょう」から始めるのでは、「挫折しろ」と言っているのに等しいです(苦笑)
現実に、その程度のアドバイスでは、苦手な生徒が英語をできるようにはならないわけで、残念ながら素人の域を出ない指導なのですね。
高校入試英語の出題内容と現実
公立高校入試の英語の出題は、大きく分けて「リスニング」「対話文」「長文」「英作文」の4ジャンルになっています。
もちろん都道府県によっては、スピーチ原稿やEメールのように分類しづらい形式の出題もありますが、基本的にはおおよそこれらの出題形式となっています。
一方、どこの都道府県を見渡しても、「英単語」が単独で出題されているようなところはありません。
また、昔は「英文法」が大きな割合を占めたものですが、今は小問として軽く聞かれる程度の都道府県が多く、あってもせいぜい大問が1つ出されるくらいです。
しかも、並べ替えや穴埋めがほとんどで、内容的にも出題形式的にもオーソドックスなものとなっており、昔のように重箱の隅をつつくような出題はありません。
このように、今の入試問題の傾向を踏まえると、「英単語」→「英文法」→「長文」という順序は何やら変な感じがしますよね。
一方で「効率的に勉強しよう」と言いながら、同時に「まずは英単語と英文法をしっかりやろう!」と言われても、実際の入試で出されないタイプの問題から最優先でするというのは、明らかに「効率的」とは正反対です。
だからと言って、「英単語や英文法が必要ない!」などと極端なことは言いませんが、少なくともガチガチの単語暗記や文法学習は必要無いのですね。
○ 参考:その他、普段の勉強で意識したい英語の勉強法のポイントは?
高校入試に向けた、出題形式別の英語勉強法
受験勉強は入試に備えたものでなければ意味がありません。
そこで、まずは上に出てきた4ジャンルについて順に見ていくことにしましょう。
高校入試英語の対話文
4つの中で1番取り組みやすいのは「対話文」です。
日本語の場合でも、一般的な文章より、会話形式の文章のほうが読みやすいですよね?
長文問題だと、一文がやたらと長くなっていたり、普段はあまり使わないような表現も出てきたりしますが、対話文だとそういったことは少ないです。
それに、実際の英会話だと、会話ならではの独特な表現が多すぎてとても難しいのですが、高校入試で問われる会話表現はそんなに多くありません。
よく出る会話表現をひととおり覚えた上で、実践的な練習をしておけば十分ですから、そういう意味では対策しやすい問題と言えるでしょう。
高校入試英語の英作文
次に簡単なのは「英作文」です。
苦手な人が多いところですが、実はここは、事前にしっかりと対策しさえすれば、かなりの得点源になるところです。
なぜなら、入試で問われる英作文は「難しい表現が書けるか」ではなく、「基本的な表現ばかりでも良いから、言いたいことが表現できるか」だからですね。
つまり、中1レベルの単語と文法ばかり使っていたとしても、適切に表現できてさえいれば満点がとれるのです。
高校入試の英作文で問われる英文法は?
さすがに中1の内容だけではつらいですが、文法的に言えば、中2の2学期くらいの内容までできれば、ほぼ大丈夫です。
例えば、不定詞で3用法など細かいことが分からずとも、「I want to ~」=「~したい」といった重要表現が頭に入っていれば言いたいことは大抵書けるものです。
ただ、前にも書いたように「添削」をしてもらうことが大切になるため、独学だけでは難しいのが弱点です。(自己採点では、どれだけ書いても意味が無いですからね)
そのため、適切に添削指導をしてくれる人が身近にいれば対策しやすく、そういう人がいなければ対策しにくい問題とも言えるかもしれませんね。
○ 参考:家庭でする英作文の勉強法はこちら
高校入試英語の長文
対策が難しいのは「長文」です。
よく「英文読解」「読解力」などと言いますが、実際は単語、文法、和訳、速読・・・といろいろな力が問われる「総合力」の勝負です。
なお、国語力もある程度必要ですが、高校入試ですと、そこまで難しい文章は出ませんから、国語力は最低限あれば大丈夫でしょう。
(その最低限が無いとつらいです。そんな生徒は先に国語の勉強が必要ですね)
そして、英語の苦手な生徒にとって最もつらいのが「長い英文を読むことそれ自体」です。
実際に、長い英文を見ただけで嫌になって諦めてしまう人も多いですよね?(笑)
仮に嫌にならなくとも、読んでいるうちに意味のつながらないところが出てきて、気づいたら全く分からなくなってしまう人もいるでしょう。
「問題を先に読め」と言うテクニックもありますが、先に読んでも、もともとできない人にはできません。
問題で聞かれていることを本文から探すために何度も行ったり来たりしているうちに時間がどんどん過ぎてしまいます。
そんなことをしているうちに、前のほうの内容を忘れてしまったり、何をしていたかさえ忘れてしまう生徒もいます。
高校入試英語の長文読解で最も必要な力は?
そういう意味では、長文で最も必要なのは「最初から最後まですらすらと読める力」です。
後は「分からない単語があっても類推する力」も必要になりますが、まずは抵抗無くすらすら読めるようにならないと勝負になりません。
実際、遅い生徒は長文をじっくり読んで問題を解いて・・・としているだけで30分くらいかかってしまうものです。
実を言うと、高校入試の長文は内容的に分かりやすいものが多いため、「時間さえあれば解けるはず」の生徒は結構います。
だからこそ、その時間を確保するためにも「すらすらと」読むことが大切なのですね。
少なくとも、文を前から読んで意味が分かる状態にならないと駄目です。
高校入試英語の長文の勉強が難しい理由
ただ、残念なことに「中学生向けの長文教材」はあまり良いものがありません。
ほとんどの教材が入試問題などから持ってきているのですが、入試問題は「3年分の内容」が出るのが当たり前です。
しかし、例えば中3の夏休みから長文の練習をしようと思うと、中3夏以降の内容(関係代名詞など)は全く知らない状態で解くことになります。
これでは意味が分からないため、適切な練習になりません。
また、長文ができないのは、今の学校の英語教育のせいもあります。
学校で習うのは、英語の教科書の文章が最長ですよね。
しかも、1つの文章を何回かの授業に分けてじっくりと学習するわけですから、入試でいきなりバーンと出されても、読めるはずがありません。
一定量の英文に触れる機会が圧倒的に少なすぎるのですね。
それに、授業中は先生が懇切丁寧に解説してくれますから、分からなくても自力で読み進めて意味をつかむ機会はほとんど存在しません。
それこそ、1文1文訳してあげることが指導だと勘違いしている先生もいます。
反対に、予習として辞書でしっかり調べながら全訳させる先生もいますが、これもまた入試や実生活で必要な力とは全く別物です。
英文読解に「日本語での全訳」など全く問われませんし、そもそも入試では辞書など持ち込めもしないのですから(苦笑)
習慣的に読む量を増やすだけでスピードは上がっていきますから、コツコツ取り組むことは大切です。
しかし、質の悪い勉強をコツコツ続けるのは無意味な上に苦痛ですから、できるだけ生徒の力に合うようなレベルの高い教材選びが大切ですし、それと同時に、一般的な教材でも使いこなせるような土台を育てる勉強法を心がけましょう。
ついでに言うと、長文読解は大学入試でも非常にウエイトが大きいところですから、時間がとれる人は中学のうちから頑張っておきましょうね。
高校入試英語のリスニング
最大の難関は「リスニング」です。
聞き取る「耳」が必要なのは言うまでもありませんが、それ以前に「言っている内容を理解する力」が必要になります。
試しに、生徒にリスニングスクリプト(話す内容を全て文章にしたもの。カンニングペーパーのようなものですね)を配って解かせるとどうなるか分かりますか?
答えは「それを見ながらでさえ、手がつかない生徒が大量に出る」です。
リスニングは「聞きとれれば解ける!」と思い込んでいる生徒が多いですが、実は「聞きとれても解けない」のですね。
リスニングの勉強法としては「とにかく慣れが重要だ」として、普段から音声を聞くことを推奨されがちです。
もちろん、それはそれで大事なのですが、英語の苦手な生徒ほど「それ以前のところでつまずいてしまっている」ことが多いのを忘れてはいけません。
高校入試英語のリスニングの勉強が難しい理由
そしてもう1つ、こちらも長文と同じく、学校教育やカリキュラム自体のまずさが原因になっていることがあります。
それは「正しい発音」や「聞き取り方」を学ぶ機会自体が存在しないことですね。
授業へのネイティブの参加も増えていますが、それによって増えているのは「ただネイティブの英語に触れるだけの機会」に過ぎません。
本当に必要なのは、「正しく聞き取るための聞き方を学ぶ機会」や、「リスニング力をつけるための勉強法について学ぶ機会」なのですが、そういうものは全くありませんよね。
塾でも、リスニング対策と銘打って、過去問などの音声を使った演習を行いますが、主に扱うのは本来の英語力とは異なる、付け焼刃的な受験テクニックのほうで、英語の正しい聞き取り方を教えてくれることは少ないです。
そもそも、日本では日常的に英語を使う機会が全く無い上に、塾も含めた英語の先生の中に「正しい発音」を自分でできる先生自体が少ないこともあって、「正しい発音」を聞く機会自体が極めて少ないですよね。
別に、自分が発音できなければ、他の道具に頼れば良いだけの話なのですが、そういった手立てを用意しないで、ただリスニング音声を使って練習させるだけのところも多いのが現状です。
聞き取れないものを、聞き取れない状態のままいくら聞いても、いつまで経っても聞き取れるようになるはずが無いわけで、ここのところでちゃんと手を打ってあげないと、生徒のやる気のほうが先に萎えてしまうというわけですね。
高校入試英語に向けた、正しい勉強法の順序
ここまで見てきたように、英語の「対話文」「英作文」「長文」「リスニング」といった問題形式に対応できるようにすることは、そのまま「入試対策」「受験対応」の勉強となります。
それでは、いきなり対話文や英作文から始めれば良いかというと、さすがにそんなことはありません。
いくら入試に出るからと言って、いきなり入試レベルの問題を解かせるのは無理があるわけで、それが通用するなら学校や塾は必要ありませんよね(笑)
特に、英語が苦手な生徒の場合には、ちゃんと段階を踏んで学ぶことが大切になってきます。
そして、こうした場合によくある意見が、
- 「長文を練習しようと思っても、英文法が分からないとまともに読み取れない」
- 「英文法を学ぼうと思っても、英単語の意味が分からなければ手がつけられない」
- 「だから、英単語→英文法→長文の順序で学んでいこう」
という論法であることは、最初のほうでも触れましたね。
しかし、「英単語と英文法を完璧にしてから次に進む」は単なる理想論であり、英語が苦手であればあるほど、英単語や英文法の勉強で挫折してしまいます。
現実にも「英単語はカードを使って覚えましょう」「何度も書いて覚えましょう」で終わったり、1000語、2000語といった膨大な数の単語が収録されている高校受験用の単語集を推薦したりする指導者は多いです。
しかし、こういったものは「英語が苦手な生徒を実際にできるようにさせた」経験が十分に無い、力不足の指導者が好む話で、それこそ別に素人でも誰でも言える程度のいい加減な方法ですよね。
実際には、カード方式が不向きな生徒もいれば、何度書いても覚えられない生徒もいて、まずはその生徒に合った覚え方を指導するところから始まることになるわけで、書き出せばきりがありません。
細かい方法論は正会員に譲りますが・・・少なくとも、いきなり入試対策用の単語や文法の問題集を1冊ポンと与えて、「これを何度もやりこみましょう」とするのはやめておいてあげてください。
いずれにしても、生徒に合わない勉強法の強制は、英語が苦手な生徒を余計に挫折させる結果を招きます。
これをお読みの賢明な皆様は、いい加減なアドバイスにはくれぐれも耳を傾けないようにされてくださいね。
実際に高校入試英語対策に入る前の注意点
入試対策にどういった勉強をすれば良いかと言えば、それは「高校入試までに残された時間」「現時点でのあなたの英語の学力、理解度」「目標とする高校のレベル」によって大きく変わります。
もともと勉強法や勉強スケジュールは、個人に合わせて組むのが基本です。
「個々に合わせた指導をしています!」が謳い文句の塾には「それって当たり前ですよね」と言いたくなります。
(この個々に合わせた指導が、学校では難しい現実もあるため、それがすごいことのように思えてしまうわけですね)
要するに、あなたに合った勉強法とスケジュール(順番や進度)はあなた専用のものでなければなりません。
実際、私が個々の生徒にアドバイスする場合は、上の3点を踏まえた上で、さらに「その生徒に実現できるかどうか」を見ながら、もっと具体的な勉強法とスケジュールを提案します。
ですから、ここでお伝えしたのは要点をかいつまんだだけの「おおよそ」の話だと思ってください。
正しい勉強法は、個々の生徒の学力状況でいくらでも変わるものですから、あくまでも大ざっぱな話だと思ってくださいね。
また、英語の苦手な生徒が多いことに目をつけて、リアルでもネット上でも割高な値段で動画教材やノウハウなどを販売する人がたくさんいます。
確かに英語は、音声が無いとつらい部分もありますが、そういった教材が特に優れているわけでも無く、実際に無料や安価で素晴らしい動画や教材を配信している人はたくさんいます。
中立性を損なうため、具体的なサイト名や教材名などはさすがに挙げられませんが、無駄なお金を使わず、良質な動画や教材を有効に活用しながら、勉強を進めていってくださいね。
○ 参考:英語に限らない、効率の良い勉強法を実践する重要なコツはこちら
中学生の勉強法の関連記事
楠木塾長
最新記事 by 楠木塾長 (全て見る)
- 中学生の国語の勉強法|高校受験・定期テスト対策 - 2022年10月8日
- 塾なしの高校受験 塾なしの独学で志望校に合格するには? - 2022年8月20日
- 計算力を上げる勉強法 ウソとホント—本当に正しい勉強法は? - 2022年5月21日
おすすめコンテンツ
弊塾からのお願い
そのため、今ではどこでも当たり前となったサイト上での宣伝や広告等の掲載を一切していません。
これは「余計な画像や動画が表示されず読みやすい」「ステマが100%無いため安心して読める」といった点では良いのですが、運営的にはかなり大変なところもあります。
そこで、今後も安定的に活動を継続していくために、寄付を募ってみます。
弊塾の活動を応援してくださる方、記事の内容が参考になったという方、ご相談が役に立ったという方がおられましたら、どうぞよろしくお願いいたします。
<ご寄付はこちらから>
※Pay What You Want方式です。