一口に「先生」と言っても、学校と塾とで求められる能力や資質は大きく異なります。

その中でも、最も大きく異なるものの1つが「生徒の学力やニーズを正確に把握する力」です。

ここでは分かりやすく「診断力」とでも呼びましょう。

 

塾の先生だけに求められる指導力

学校は義務教育であり、学校の先生がする指導の多くは「教育課程に沿って教える」ことを目指したものです。

授業時間数も細かく決められていて、生徒がついてこれようがこれまいが関係なく、決められたペースで授業を進める必要があります。

「中1の学習内容を理解できていないせいで、中2の内容にもついていけていない生徒」に対して、前の内容に戻って教える・・・ようなことはせず、普通に中2の内容をそのまま教えていくだけです。

通知表や内申点という形で成績をつけますが、志望校に成績が足りなくて悩んでいる生徒のために、追加の指導をするようなこともありません。

もちろん、そういったことまでフォローしてくれる良心的な先生も中にはいますが、基本的には「教育課程に沿って教える」だけの存在です。

 

しかし、塾は「何らかの理由があって、義務教育だけでは足りない生徒」が来るのが前提です。

高いレベルを求める生徒もいれば、学校の穴埋めを求める生徒もいますが、とにかく「何らかの理由」があり、それを解消したくてやってきます。

つまり、塾の役割の本質は「その問題を解決してあげる」こととも言えるでしょう。

(ただし、学校と同じく「塾で決められたカリキュラムに沿って教える」だけの存在も大勢いることには、注意が必要です)

 

当の本人には真の原因が分からないことが多い

ところが、ここで大きな問題となるのが、「本当の原因が何なのか、生徒も親も分かっていないことが多い」点です。

 

医者に病気を診てもらう時もそうですが、自分の不調の原因が何で、どうすれば良くなるのかが自分ではっきりと分かっていることは少ないですよね。

自分が何の病気かはっきりと分かっている時は、自分で市販の薬を買っても済みますし、どうすれば良くなるか分かっているなら、お金と時間のかかる病院になどわざわざ行きません。

もちろん、単に薬を出してほしいだけというケースもありますが、基本的には不調の原因や治療法が分からないからこそ医者に頼ります。

特に問題なのは「素人判断をしたのが間違っていて、実はもっと別の病気だった」というケースで、そういう心配があるからこそ、大丈夫そうだとは思ってもわざわざ病院に行くという人も多いでしょう。

 

塾の場合もそれと同じで、生徒や保護者の側が、抱えている悩みや問題点の真の原因を正しく掴んでいることは少ないものです。

もちろん、「こうではないか?」「こうしたら良いのでは?」という思いがある場合もありますが、それが正しいのか間違っているのかの判断は、自分だけではなかなかつきません。

逆に言えば、そこのところを正しく診断するところからが、指導のスタート地点とも言えるでしょう。

 

診断力の有無が生み出す違い

良い先生ほど生徒の問題を素早く把握し、適切な指導をして問題を解決してくれます。

  • そのケースに有効な選択肢をすぐに提示できる。
  • 有力な選択肢の中から、その生徒にとってどれが最善かを正確に判断する。
  • 素人では思いつかない別の可能性に注目する。

 

一方、力の無い先生は、判断を誤り、間違った指導をしてしまいます。

  • そもそも有効な選択肢を提示できない。
  • 有力な選択肢の中から、わざわざピントはずれのものを選んでしまう。
  • 素人と同程度の可能性しか思い浮かばない。

 

医療費も教育費もとても高いものですから、無駄な検査や指導はできるだけやめてほしいですよね。

とにかく薬を出して診療報酬を儲けようとする医者のように、とにかく課題や授業回数を増やすだけの塾は存在自体が罪です。

さらに間違った治療が続くと患者の体力が失われて取り返しがつかなくなるように、間違った指導が続くと最も大事な生徒の「やる気」が失せていきます。

そういう不幸や悲劇を避ける意味でも、教える側に最低限必要なのが「診断力」なのですね。

 

治療も指導もパターンはあるが、全く同じ事は無い

治療でも指導でも「大まかに言って、こうすれば良くなる」という方法はあります。

病院の治療ならガイドラインですし、塾の指導ならマニュアルですね。

こういったものは、無いよりもあったほうが良いですから、その存在自体は有意義なものです。

 

しかし、人間はみな違うわけで、そうしたものが必ず通用するということはあり得ません。

指導をする際にも、生徒が10人いれば、その学力やニーズは10通りです。

ですから、実際の指導に入る前の「診断」は絶対に不可欠なものです。

 

それなのに、どんな生徒が相手でも、自分が「これが一番」と思っている指導法で画一的に指導する塾や先生が、かなりの数います。

しかし、診断もしないで自分の指導を押しつけるのは、診察もしないで薬を与えるやぶ医者と同じですよね。

生徒や家庭のニーズを聞こうとさえしないで、「自分のやり方は絶対に正しい」と押しつけてくる塾や先生はとても危険な存在です。

 

生徒の学力や勉強法の何が足りなくてどこに問題があるかを見極めるのが第一歩です。

そこから先の治療法(指導法)は先生によってばらばらで良いですし、どんな方式だろうと先生の信念にしたがって行ってもらえば良いと思います。

しかし、どんな教え方をするにしても「診断力」だけは、塾の先生には絶対に欠かせない能力の1つであり、先生としての力量を決める大きなポイントの1つと言えるでしょう。

 

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楠木塾長

楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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