最近は動画授業・映像授業の配信や販売が増えています。

大学受験の衛星授業はもちろん、特定の教科や単元の講義に、Eラーニングの塾と、様々な商品が山のようにできてきています。

おそらくこれからますます増えていくでしょう。

 

こういった流れを見ていると、動画授業を作ってみるのもおもしろそうだな・・・と感じます。

専用教材と、その解説動画、そして使い方や勉強法の動画までつければ、かなり効果は望めそうです。

 

一方で、動画授業を作る前から限界も感じます。

その限界は、おそらく生の授業や指導に力を入れている先生ほど感じているものだと思いますが・・・

動画授業があまりにもてはやされすぎている感がありますから、警鐘を鳴らす意味でも、あえて動画授業に批判的な記事を書いてみます。

動画授業の流行に疑問や違和感を感じている、生の授業に心血を注ぐ先生たちに共感いただければ嬉しいです。

 

限界1:生徒のモチベーションに依存しすぎる

動画授業のメリットとして「何度も繰り返し見られる」「好きな所で止めたり巻き戻したりできる」などがあります。

これは裏を返すと「何度も見るだけのモチベーションがなく、そういう行動をとらない生徒はメリットが得られない」となります。

そもそも動画を回すかどうか、画面に集中するかどうかも生徒のモチベーションにかかっていますよね。

要するに、そこそこモチベーションのある生徒には効果が期待できても、モチベーションの低い生徒には効果が期待できないということです。

 

ただこれは「そういう生徒でも見たくなるような動画にすれば良い」という考え方で、半分くらいは解決しますね(笑)

そういう意味では、塾選びや教材選びと同様に、動画選び(先生選び)も大事になってくると思います。

 

限界2:集中力(意識)を呼び戻す手が打てない。

授業中に集中力がない生徒の集中力を高め、意識が飛びそうな生徒の意識を呼び戻すのは、教室でよく行われていることです。

ちょっと大きな声を出したり、音を立てたり、作業を挟んだり、雑談をしたり・・・など、細々としたテクニックはたくさんありますが、要するに「生徒が聞いている状態にする」ための手を打ちます。

 

しかし、動画の場合は聞いているかどうかは誰にも分かりません。

自分から進んで見ている場合はよっぽど大丈夫ですが、強制的に見せている場合は危険です。

また、やる気があっても眠くなったり、たまに意識が飛ぶことは誰にでもあります。

ちょうどそこで大事な内容だったりすると後で響くので、そういう時に手が打てないのが悩みどころです。

 

もちろん、動画の中でそういうテクニックを使うなり、動画ならではの手段を考えて工夫すれば解決は可能ですけどね。

そういう工夫がしてない、ただ淡々と話し続けるような動画では厳しいという話です。

 

このあたりまでは素人でも思いつく問題点ですね。

ここからは指導する側からの提言です。

 

限界3:確認ができない。

動画の場合、分かっていてもいなくても、授業が流れていきます。

一生懸命に頭に入れていても、ただ画面を見ているだけでも、そんなことはお構いなしに同じように流れていきます。

「学校や塾の授業も同じですけど?」

・・・そう思った人、鋭いです(笑)

そうです。

実はこれは動画だけの問題ではありません。

 

例えば予備校などでよくやる講義形式の一方通行の授業は動画と同じことが起こります。

むしろ動画のほうが一時停止や巻戻しができる分だけ便利なくらいですよね。

だから大学入試の衛星授業が広まっても、指導の劣化はあまり起こりません。

 

しかし、本当に良い指導のためには、この「確認」ができないことは致命的です。

ただ困ったことに、「確認」に対する認識が教師間であまりに違うことため、このことはあまり意識されていないのが現状です。

ひどい教師は、生徒が分かっているかどうかは関係なく、自分勝手に自分の教えたいことだけを教え、ひたすらに授業を進めます。

普通の教師は、「分からない人?」などと聞きながら、「何となくみんな分かったかな」という程度で授業を進めます。

一方、力のある教師は、生徒が40人いたらそれぞれがどこまで分かっていて、どこでつまずいているかを1人1人全て把握しながら先に進めます。

分からない人がいれば進行を変えますし、先に進むにしても後でフォローすることを前提にしています。

個別指導のように1人1人別の指導をすることは不可能ですが、個別指導に劣らないレベルで個々の学力や理解度を把握すべきであり、それを当然の責務として考えています。

力のある教師は、生徒や保護者が思っている以上に、個々の生徒の理解度をかなり詳細に把握してくれているものです。

そうした力のある教師からすると、ただ動画を渡して見せるだけの授業は、講義形式の一方通行の授業や、確認したつもりで確認になっていない一般教師の授業と変わらないのです。

 

限界4:ステップ刻みとステップ飛ばしができない

教える内容を1から10までを全て順にべったりと教えるのは下手な指導です。

よく言う「参考書を読んでるのと変わらない」指導ですからね。

 

上に書いたように、力のある教師は生徒の理解度を「確認」によってしっかり把握しています。

そのため、目の前の生徒に合わせて、時にステップを細かく刻んだり、時にステップをわざと飛ばしたりして、より的確かつ効率的に教えることができます。

(個別指導のほうが利用場面が多いですが、集団指導でも行います)

 

これは残念なことに「早送り」では実現できません。

スピードを早くする、単純に指導内容をすっ飛ばすなどでは無く、その子の理解度に合わせて余分な説明を飛ばしたり、必要な説明を追加したりするということですから、早送りや巻戻しでは駄目なのですね。

 

一番分かりやすい弊害が、よくできる生徒に5分で済む説明を、授業で1時間かけて教えるような状況ですね。

5分で終えて残りの55分で先の内容や、より理解を深める内容に取り組んだほうが良いに決まっています。

生徒にとって分かりやすい指導かどうかも、突き詰めるとここにかかってくるため、これができない教師はもちろん、これができない動画はかなり物足りないわけです。

 

なお、「ステップ刻み」も「ステップ飛ばし」も、教師の側にかなりの力量が問われる・・・といいますか、力量によって刻めるステップの細かさや飛ばせる場所の判断などが変わってきます。

個別指導なら大丈夫だと思いそうですが、バイト講師はもちろん普通レベルの教師ではこういったレベルの指導が行えるはずもありません。

一般的な個別指導は、基本的に「分からないところを教えてもらえる程度だ」と思っておくほうが無難です。

 

挙げればまだまだありそうですが、この3と4のあたりは力のある教師ほど共感いただけることではないかと思います。

ただ、動画にはそれらをひっくり返す大きな「遠くにも届けられる」というメリットがありますよね。

テレビや雑誌で紹介されるような優れた先生が学校にもいるわけですが、関われるのは所詮1つのクラス、1つの学年だけです。せいぜい影響を及ぼしても1つの学校でしょう。

そういう先生がまったくいない駄目な学校・塾ばかりで困っている保護者や地域もたくさんあるわけで、それ以前に塾も数えるほどしかないような地方もあります。

 

そういうことを考えると、良くない先生の生の授業よりも、良い先生の動画授業のほうが良いのかもしれず、きっとそういうニーズがあるからこそ、たくさんの動画教材が出まわり、さらに増え続けているのだと思います。

理想は医療の遠隔手術のように、動画を使った双方向の授業でしょうか。

とは言え、それも対象範囲が広がるだけで、実際に関われる人数はかなり絞られます。

そういった本当に良い先生の授業や指導を、全国に広げられるような仕組みができたら良いですね。

結局は教師1人1人がレベルアップするしか無いという、叶わぬ夢に至りますけれども(笑)

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楠木塾長

楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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