「成績が上がりません。塾を変えたほうが良いでしょうか?」

そんな趣旨の教育相談を、今でも定期的にいただきます。

 

細かい状況は家庭によって千差万別で、「塾を変えるべき」となる場合もあれば、「変えないほうが良い」となる場合もあります。

  • 通っているのはどんな塾か?
  • 生徒の成績や学力状況はどうか?
  • 実際これまでに、塾はどんな指導をしてくれたか?
  • 塾に通ってからの学力の推移や、学力以外の生徒の変化はどうか?
  • 生徒と、塾の先生や他の生徒との関係はどうか?
  • 塾の指導を親御さんがどう評価しているか?
  • 親御さんが塾に相談した時の反応はどうだったか?

実際には、こういったことを踏まえながら判断していくべきことだけに、簡単に「変えましょう!(変えないでおきましょう!)」とはなかなか言えません。

 

しかし、細かいことはともかく、家庭でも大まかな判断をしたいという方もいるはずです。

そこで今回は、塾に入っても成績が上がらない場合に、塾を変えるかどうかを決める判断のポイントを「決定版」として紹介します。

実際に相談に乗る際のポイントでもありますから、お悩みの方はご相談の前に参考にしてみてください。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

学力別に見た中学生の塾選び

 

重要ポイント1:上がらないのは「どちらの成績」なのか?

塾に入って順調に成績が上がれば問題は無いのですが、順調に行くばかりではありませんよね。

1度はその塾を選んだ以上、指導成果が出るまで一定期間は待つことも必要です。

しかし、さすがに半年間も待てば結果は見えてきますから、その時点で判断をするのが1つの基準となります。

 

ただし、よく「成績が上がらない」と言いますが、その中身は大きく言って次の2つに分かれます。

  • 「学校の通知表が上がらない」
  • 「定期テストや模擬テストの点数・順位が上がらない」

これらは全く別のため、分けて説明します。

 

通知表が上がらない

本来、塾に通わせるのは「通知表」を上げるためですよね。

しかし、実を言うと、これは結構難しいのです。

 

「通知表」は定期テストだけでなく、授業態度や提出物など、様々な観点で決まります。

一応その観点は公に決められているのですが、実際は、担当の先生の主観にかなり委ねられます。

塾でいくら態度が良くても、学校で態度が悪ければ全く意味がありません。

いくら実力がついてテストの得点が伸びても、他の面に問題があれば良い成績はつきません。

 

定期テストと通知表の相関は学校や先生によっても大きく異なりますが、詳しく調べてみると、相関の小さい中学校がとても多いです。

例えば、定期テストで400点をとったのに、通知表が5教科で16(オール3とちょっと)しかつかない生徒がいます。

一方で、定期テストは320点くらいなのに、通知表で20(オール4程度)とる生徒もいます。

 

これはほんの一例に過ぎず、同じ点数で通知表が違う現象は、現実にはいくらでも起こります。

塾の指導でテストの点数が上がったとしても、通知表が上がるかどうかは別問題なのですね。

 

それなのに、大抵の塾の指導は「授業の理解」と「定期テスト」に大きく偏っています。

授業態度や提出物は学校内で起こる出来事ですから、塾の先生が直接見ることはできません。

それを管理するのは難しいですし、仮にやったとしても、とても手間がかかって面倒です。

そのため、多くの塾は「通知表を上げるために本当に必要な指導」には手を出さず、せいぜい面談をやって「通知表が大事だぞ」と言った話をするだけで、何も具体策を打たずにお茶を濁すのですね。

 

参考までに指導の現実を言うと、通知表の重要性を伝え、生徒が顔面蒼白状態(笑)になり、目の色を変えて頑張り始めるような面談をしても、実際に成績が上がるのは1-2割程度です。(中3だとそれより多く、中2だとそれより少なくなります)

これは「面談で得たやる気が継続しない」からですし、うまくやる気が続いても「通知表の悪い生徒が自分なりに頑張っても、そもそものやり方が間違っているため、やはり通知表が上がらない」という事情があります。

ですから、本当に必要な場合は、重要性に気づかせるだけで終わらず、授業態度の細かい指導はもちろん、提出物の中身の「目視」や提出状況の確認、さらには、やる気継続のためのモチベーション管理を、生徒が塾に来る度にまめに行うことで、上がる確率を高めていきます。

 

しかし、これだけ手間と時間をかけても、実際には翌々期ぐらいに通知表が上がれば幸運なほうです。

なぜなら、そういう生徒ほど、学校の先生の中で悪いイメージが染みついてしまっており、そのイメージが変わるまでは評価が良くならないからですね。

もしも新しい塾や教育サービスを利用して、急に通知表の評価が高くなったなら、学年の変わり目でも無い限り、「前の塾や教育サービスの成果が出た」と思うほうが正しいです。

(それにも関わらず、顔写真などをつけて「利用して数日後に通知表が上がった!」と宣伝する塾や教育サービスも多いわけですが、冷静に評価しましょう)

 

そして、通知表を上げるための具体的な方策についてまで、口抱きだけで終わらずちゃんと指導をしてくれる塾や先生に当たれば幸運なのですが、現実にそんな先生に遭遇できるのは極めて稀です。

「そこまでやってられない」と考える先生が普通ですし、それどころか、「それは面倒の見過ぎだ」と、まるで悪いことであるかのように考える塾や先生も多いのが実情です。

実際、私がこういった指導をしていた時も、先輩のベテラン教師や上司などから、褒められるどころか注意や警告を受けたものです。

単にそこまでするのが面倒くさいというのが本音でしか無いのですが、「あまり面倒を見るのは甘やかしになって良くない」というのが彼らの言い分でした。

いわゆる「子供のため」を持ち出せば、物事は何とでも理由がつくものですね(苦笑)

 

私個人としては、通知表の重要性を教えるだけで、具体的な指導をしないのは、塾として手抜きだと思います。

授業態度や提出物への指導を継続的に行いつつも、生徒の自立を妨げないように、最終的には関与が必要無い状態にまで指導すれば良いのですからね。

それに、塾でだけ「良い子」で、学校では態度が悪くなる生徒を、「塾の授業には悪影響が無いから」と言ってそのまま放置する塾講師のほうが、よほど甘やかしだと思います。

 

ただ、そこまでを一般の塾や先生に期待するのは、教育方針がどうか以前に、能力的な意味で無理がある(=たとえやろうと思ってもできない)のが現実です。

これは大手、個人、個別指導、フランチャイズ塾などに関わらず、ほぼ全ての塾について言えることです。

もちろん、次々とたくさんの教室を展開する儲け主義の塾ほど、手間のかかることを嫌いますから、こういうことまではしてくれない可能性が高くなります。

そのため、もしも今の塾がきちんと面倒を見てくれるところであるなら、あなたに余程見る目があったか、かなり運が良かったと思って良いでしょう。

(ただし、そういう手間を惜しまないタイプの先生は、得てして効率の悪い指導をしがちなため、入試対策は弱かったりするのが難点ですね)

 

このように、「保護者が求めるような、本当の意味で通知表を上げるような指導まで、普通の塾は面倒を見ない」のが一般的ですから、「通知表を変えたいという理由で他塾に変えるのは、あまり意味が無い」ことになります。

もちろん、そういう素晴らしく面倒見の良い塾が見つかったなら、すぐに変えてもらって構いませんが、そういう塾が近くにあるかどうかさえ分からない状況で、今の塾を辞める前提で考えるのは危険すぎます。

それこそ「塾を変えようか」と検討すること自体が、不毛に終わりやすいですから、もちろん新しい塾は探していただきつつも、あまり期待はしすぎないで、今いる塾をもっとうまく活用する方向で考えていくほうが無難でしょう。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

成績が上がる塾とは?

 

得点(順位、偏差値)が上がらない

こちらは通知表と違い、話は簡単です。

もともと勉強は、特別に優れたノウハウなどなくとも、「ほどほどの指導法(勉強法)」「ある程度の時間」やりさえすれば、今よりは確実にできるようになります。

そして、塾ならばほどほどの指導はして当然ですし、塾に入れば当然その分だけ「勉強時間」は増えますよね。

ですから、塾に入れば、入る前と比べて多少なりとも成績が上がるのは当たり前なのです。

特殊な事情を抱えた生徒の場合はしかたの無いこともありおますが、そうでない大多数の生徒は、入塾前よりは上がって然るべきなのですね。

ですから、通塾している今の生徒を見て、その生徒達の成績が入塾前より上がっていないようなら、そこはやめておくべきです。

 

しかし、ここを勘違いして、成績が上がっただけで喜ぶ生徒、保護者の方は多いですよね。

塾に毎月高いお金を払って通わせているのですから、ある程度上がるのは最低条件です。

上がったから喜ぶのではなく、「目指すレベルまで上がるかどうか」で判断しないといけません。

 

ですから、一部の非常に優れた塾や教師は、成績が上がっても、驚きも誇りもしません。

そういう塾や教師からすれば、そういったことは、ごく当たり前の日常茶飯事ですからね。

ただ、そういう塾や教師には滅多に当たりません。

超有名講師に頼らなくとも、あちこちの塾を見ていけば、本物のプロは少ないなりにちゃんといるものです。

しかし、資格も無く、素人でもいきなり教壇に立てる業界ですから、悲しいことにそうでない教師のほうが圧倒的に多いのですね。

宝くじで300円や1000円くらいは当たっても、高額賞金はなかなか当たらないのと似ています(笑)

 

ですから、塾関係者の反発を承知であえて極論すると、どの塾を選んでも総合的な指導力は大して変わりません

指導方針、教材、指導システム、授業料、校舎などのハード面、校舎の雰囲気など、細かい条件は大きく違いますし、同じ塾でも個々の先生の指導力にはかなり大きな差があります。

それに、同じ教師でも教科ごとの得意不得意や対象学力層の向き不向きがありますから、「どの先生に習っても同じ」などとは口が裂けても言えません。

 

しかし、そうした全ての面でプラスマイナスしながら、個々の先生ではなく「塾全体」で評価をしていくと、結局、塾としての総合的な指導力は大抵どこも似たり寄ったりになります。

1人の優れた教師がいても、残りが凡教師ばかりならば、指導全体としては薄まってしまうのは避けられないのですね。

そうで無いのは、力のある教師ばかりを集めたプロ集団のような塾ですが、バイト講師を使って金儲けを目指す塾経営スタイルが全盛のこの時代で、そういった塾は極めて少数派なのです。

そういう意味で、生徒の人格を破壊するような危険な塾や、お金儲けばかりのハズレの塾には注意が必要ですが、そこさえ避けることができれば満足して良いと思います。

 

以上から、

  • 「通知表」は塾を変えても上がらない可能性が高い。それよりも、今の塾で本人の意識や習慣を変える指導をしてもらうことを考えるべき。(それをお願いしても無理なようなら、そこではじめて変更を検討する)
  • 「得点力」は上がって当然。半年後に「下がっている」ならば迷わず変えるべき。「維持している」場合は、他に満足できる点があればそこも含めて評価をし、不満のほうが大きいなら変更を検討する。

こういったことが言えます。

 

成績が悪いと言っても、「得点力」と「通知表」のどちらが悪いのか?

こういった視点を持ってもらうように書いてきました。

 

ところで、ここでもう1つ重要なポイントがあります。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

偏差値の正しい受け止め方と塾選び

 

重要ポイント2:生徒の気持ちと、塾との相性を重視しよう!

「塾の中身はいろいろ違うものの、総合的な指導力はどこも大して変わらない」と書きました。

しかし、実際の指導では、この「塾の中身」がとても重要になってきます。

 

指導力が大して違わなくても、生徒と先生の相性が良いと、結果は大きく違ってきます。

不思議なもので、合わないベテラン講師よりも、合うバイト講師のほうがずっと成果が出るものです。

 

これはベテラン講師と言えども、その多くが本当の指導力を持っていないせいもあります。

一方で、時に「相性」は、多少の指導力の差くらいならひっくり返してしまうほどの力を持っているのも事実なのです。

 

また、先生との相性ほどではないものの、塾そのものとの相性も大きな影響を与えます。

例えば、世の中には「生徒に強制する塾」と、「生徒の自主性を重んじる塾」とがあります。

どちらが正しいかをここでは論じませんが、どちらの方式でも、成果を出している塾もあれば出していない塾もあります。

 

これは方式そのものの優劣よりも、教えている塾や先生の指導力、そしてその方式が生徒に合っているかどうかが大きな意味を持つことを指します。

 

実際、同じ塾、同じ方式でも、教室や責任者が変わると、生徒の成果は全然違ってくるものです。

また、大して評判の良くない塾で、指導も大して熱心でないのに、たまたまやり方がその生徒に合ってグンと伸びるケースもあります。

ですから、生徒が塾のやり方や雰囲気などと合うかどうかはとても重要になります。

 

こうした「相性」が大きな意味を持つのは、それが生徒の「やる気」につながるからです。

要は生徒がその気になって勉強するか、嫌々勉強するかで、全然結果が違ってくるわけですね。

当たり前すぎる話ですが、塾選びの際には見落としがちなところです。

だからこそ、ここで改めて考えてみてほしいのですね。

 

そこで考えてみてほしいのが、「今の塾は生徒に合っているか?」です。

成績が上がっているか下がっているかはすぐに分かりますが、それだけで終わらないでください。

生徒との「相性」はどうか、それを通じて「やる気」が上がっているか(または、今は普通でも今後上がりやすい素地があるか)どうかが大事です。

 

多くの「成績不振」の生徒は、中3のある時期になると急に頑張り出します。

その時期がいつかは生徒によって大きく異なりますが、この「尻に火がついた時」に、より勉強しやすい環境であることが大切です。

非常に優れた塾やハズレの塾で無い限り、どこの塾でも大して変わらないですし、微妙な違いがあったにしても、そこまで見抜くのはプロでないと無理ですよね?

ですから、親御さんとしては、塾の指導力を見抜く作業よりも、その塾と自分の生徒との相性を見る作業のほうが重要になると思います。

 

そして、もし今の塾が「相性の良い塾」であれば、最後のスパートはかなりきくことになるでしょう。

いわゆる「奇跡の逆転合格」などが起こるのも、多くはこのケースです。

(逆に相性が悪ければ、いつまでたっても火がつかない、最悪の状態にもなります)

 

もちろん、尻に火がつく前の時期から前もってやる気にさせ、十分な受験対策を行えるのが一番良いのですが、そこまでの指導力を持った塾や教師はほとんどいません。

であれば、せめて「やる気になるタイミングが早くなる塾、いざやる気になった時に加速がつきやすい塾」を選んでおきたいですよね。

 

実際にご相談をいただいた場合には、次のような視点でアドバイスと今後の方針をお伝えしています。

  • 最初に、現在の「塾の指導内容」と「生徒の学習状況」を確認し、塾の指導力やサービス内容の十分さ(不十分さ)が、一般的な塾と比べて許容範囲内であるかどうかを診断します。
  • それが許容範囲内であれば、今の塾を続ける前提で、「いかに先生の指導をうまく引き出すか」「どうやって塾をもっと上手に活用するか」(または、塾に足りない部分を家庭でどう補うか)といったあたりを提案します。
  • 逆に許容範囲外であれば、塾の変更を奨めるか、塾への改善要求のしかたについて提案します。

そして、もう1つ重要となってくるのが「相性」と「生徒の気持ち」です。

小学生までならまだしも、反抗期を迎えた中学生の場合、親が勝手に塾を変更しても、その後は大抵うまくいきません。

むしろやる気を損なって、前より勉強しなくなるなどの拒絶反応が出る場合も多いものです。(そして、肝心の「自立心」も阻害します)

今の塾を続けるにしても、新しい塾を探すにしても、生徒の気持ちと、塾との相性を見ながら判断することが大切になります。

 

以上の点に気をつけるだけでも、何も知らない状態とはかなり違った視点で検討ができると思います。

もっと具体的な塾選びの視点についても順にお届けして参りますが、まずはここまでのポイントをしっかりと押さえてみてくださいね。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

良い塾の選び方・見抜き方 塾選びの判断基準

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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