定期テストの過去問演習は効果があるのか、そして、塾が定期テストの過去問を配ることの是非についてです。

 

過去問はあったほうが無いよりも絶対に有利です。

後で出てきますが、テスト作成に手抜きをする先生の場合は、毎年や一年おきで似たような問題が出ますから、過去問をやっておくことで高得点が期待できます。

それに、傾向の異なる問題集を必死でやるよりも、傾向の近い過去問を使ったほうが、「的外れ」な勉強を防げる可能性が高くなります。

 

ただ、過去問に頼ったことで失われる、大きな「何か」があるのも事実です。

過去問をしていると、全く同じ問題や似た問題が出ることが多いのですが、これははっきり言って「カンニング」しているのと大差ありません(苦笑)

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

こんな塾には預けるな

 

過去問を与える塾が良いのか?

個人的には、過去問を配布するような塾はつぶれたほうが良いと思っています(笑)

  1. 過去問をしっかりと分析、研究した上で、指導にも反映させるが、安易にコピーを配布するようなことはしない塾
  2. 過去問をしっかりと分析、研究した上で、配布が必要と判断して配布する塾。
  3. 研究するわけでもなく、とりあえず過去問を配布する塾
  4. 過去問も配らないし、対策もしない塾

塾を良い順に並べるとこうなり、個人的に許せるのは2までです。

3以下は教育機関とは言えず、むしろ有害ですね。

(もちろん4については、そもそも定期テスト対策を謳っていない塾は除きます)

 

塾が過去問を配りたがる理由

塾の立場から言えば、過去問を配るほうが指導が圧倒的に楽です。

中身を大して見なくてもコピーして配れば良いですし、多くの生徒は、コピーをもらえばそれだけで満足します。

とにかく配ってやらせさえすれば良いのですから、こんなに楽な指導はありません。

 

そして、対策がうまくいかなかった場合の言い訳も楽です。

  • 「ちゃんと過去問を隅々までやったのか? やってないならできなくて当然でしょう」
  • 「今年は傾向が変わったからできなかった。でも、みんな同じ条件だからしかたない」

・・・など、言い方はいくらでもあります。

同じ問題が出ればラッキーですが、もし学校の先生が変わって問題傾向自体が大きく変わったとしても、どうとでも逃げようがあります。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

良い塾の選び方・見抜き方 塾選びの判断基準

 

塾が過去問を配ることで、教育全体の質が低下する

一方、過去問を配るのは、多くの学校にとって大迷惑です。

毎年同じ問題を出すのは論外としても、同じ範囲だから同じような問題が出るのは当然です。

しかも同じ先生が作っていたら、類題になってしまうのはしかたのない面がありますよね。

そこで数年分のコピーを配られたら・・・使える問題が無くなってしまいます。

 

もちろん、同じ問題を使いまわすのは良いことではありませんから、塾が過去問を使おうと使うまいと、その事自体は辞めるべきです。

しかし、理想はそうであっても、作る側の先生たちの現実も考える必要があります。

毎年毎年、全く別のテストを作れと言われれば、先生たちの反応は次のように分かれます。

  • 諦めて同じ問題を出す「手抜き先生」
  • 細かいことや入試にすら出ないことを聞くような「小難しい問題を作る先生」
  • ちゃんと研究して毎年毎年良い問題を作ろうとする「一生懸命な先生」

「手抜き先生」は過去問が的中するため、過去問を持っている生徒が有利になります。

しかし、成績を決めるテストでこれでは公平と言えません。

「小難しい問題を作る先生」は、高校範囲の内容や、時には高校ですら習わない不必要な内容(もはや趣味の問題)を出します。

これは過去問が影響しませんが、生徒の側が大変ですし、本来の「学校教育」の意義が失われています。

 

そして最後の「一生懸命な先生」は、消耗し、つぶれてしまいます。

学校の先生にはいろいろ雑務があり、特に中学校教師だと授業を教えているだけでは成立しません。

それを理由に授業を手抜きする教師は失格ですが、そうしないと回らないような学校もあるのが現状です。

 

もともと良質なテストを作るのは、ものすごくエネルギーのいる作業です。

公立入試やセンター試験などは専門の会議があって、専門家が集まり1年かけて作成していますから、問題の質も内容も定期テストとは比べるまでもありません。

しかも、定期テストを作るのは、それぞれの担当の先生であり、現実的にテストを作る時間は「残業」や「持ち帰り」になりがちで、それを年に何回もするのですから、テストの質を維持するどころか、用意するだけでも大変な作業です。

 

塾は、大手塾ならば作成部門がありますし、中小塾でも教材会社から買うことができます。

過去問を配布されることも基本的には無いですしね。

しかし、もし月次テストの過去問を配布したり、教材会社のテストを勝手にばら撒いたら、運営が成り立たなくなる塾はいくらでもあります。

それなのに、平気で学校の過去問は配布してしまう・・・要は相手のことを考えることができないのですね。

(学校は学校で、塾を嫌って嫌がらせのようなことをする先生も多いのですが)同じ「教育」という目的に向かっているのに、傷つけ合う行動をとってしまうような塾や先生が、本当の意味で良い教育をできるはずもありません。

本当に地域の子供達のことを考えているのであれば、上に書いた1のような行動をとるべきなのです。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

教えすぎないことの大切さ

 

過去問を配る指導が、生徒にもたらす悪影響

定期テストを過去問で乗り切るだけのやり方は、生徒側にも悪い結果をもたらす可能性が高いです。

過去問をやって、場合によっては答えを覚えて、それで点数をとる・・・これは1つの効果的な勉強法ですし、少なくとも大学入試までは通用するやり方です。

ただ、社会ではテストのようにパターン化された情報源は少なく、むしろそうしたパターンを自分なりに見つけ、今までに無い新たなパターンを生み出していく力のほうが求められています。

 

もちろん、過去の情報をそのまま利用する力の高い人ほど、入試でも良い点数をとって学歴も良くなり、社会でも優先的に採用されるわけですが、それが過去の前例にばかりこだわる役所や大企業の風土を生み出し、日本全体が制度疲労や機能不全を起こしている面もあります。

そうした力を持つ人たちが良い学歴と職位を得ていく時代はもう少し続くでしょうが、すでに時代は変わりつつあり、実際にそうした枠を外れた人材の活躍の場が増えていますし、それを求める企業も増えています。

将来役に立つ力を鍛えるのが教育の目的の1つであることも踏まえると、目の前のテストの結果のことだけを考えて、生徒たちに過去問を配ってやらせるような指導をするのは間違っているのですね。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

中学生対象の塾を利用する際の注意点

 

過去問をやっても通知表や内申点が上がらないことも

それに、テストができても、必ずしも通知表が上がるわけではありません。

実際「テストが良かったのに通知表が下がった」と言う生徒はたくさ んいますし、「どうしてこの点数でこんなに成績が良いの?」となる生徒もたくさんいます。

定期テストの点数と通知表の相関表を作ってみると分かりますが、相関が弱い学校やクラスもありますし、例外的な成績をとっている生徒も大勢います。

中学生の通知表におけるテストの重要度は先生によって個人差もあり、一概に「テスト結果が全て」とも言えないのですね。

(実際に、どうしても内申を上げないといけない生徒を預かった場合、私だとテストよりも他のことに神経を使わせますし、そのほうが成績は上がります)

 

しかし、こうやって別の方向から成績を上げたり、将来に通用する根本的な学力を上げようとしたりするのは、非常に面倒で手間がかかります。

塾からすれば、そんなことをするよりも、さっさと手間のかからない方法(=過去問を配布すること)でより多くの生徒を見たほうが、効率良くお金が稼げますよね。

何しろ、過去問をコピーして配り、生徒にやらせて解説をするだけなのですから、特別な指導力は要求されないわけで、経験の浅い新人講師でも学生バイト講師でも、わりと問題なく指導ができてしまいます。

一方、過去問をちゃんと分析する作業は面倒ですし、それをもとに過去問とは別のプリントを用意するのはかなりの時間とお金がかかります。(そのため、儲け主義の「ずる賢い」塾ほどそういうことはやりません)

このように儲け主義の塾からすれば、「過去問を配ってやらせる」のはものすごく楽でありながら、生徒の満足度も高まるという、非常に便利な方法なのですね。

 

なお、指導する側の視点で言うと、ある程度コツがつかめてくれば、過去問はあっても無くても同じです。

そもそも、定期テストは決まった範囲で決まった内容を聞くテストですから、出題される内容は決まりきっています。

それを、聞き方を変えたり雰囲気を変えたりしているだけで、要は毎年同じことが聞かれています。(趣味の問題や、やたらと難しい問題は除きます)

それに、先生による出題傾向の違いもおおよそ分かるもので、要するに、学校の先生も「できるようになってほしい」と思って教えるわけですから、授業の傾向がそのまま出題傾向になりやすいのですね。

(ただし、中にはわざと点数をとらせないテストを作るのを楽しみにしている変な先生もいます)

 

もちろん、新しい内容として初めて習う生徒からすれば分からなくて当然ですが、毎年教えているプロ教師は、テストを見ると「今年はこういう聞き方で来たか」「またこれが出てるな。でも、こういう聞き方だと生徒はできないだろうな」というようなことを感じています。

ですから、それを実際の指導の中に組み入れて、「こういう聞き方で出ることもあるけど、同じ問題だということが分かる?」「こういうタイプの問題は、本質的にここが分かれば全て解けるよ。見た目を変えてきても、本質となるポイントを見逃さないようにね」などとするわけです。

日々の授業でそういうのが積み重なると、まとめて対策などしなくても対応力がついていきますし、そういうことができないからこそ、過去問を配ってやらせるという、レベルの低い指導法に頼らざるを得ないのですね。

 

学校の過去問をもらえる塾を「ありがたい」と思う風潮が強いですが、本来するべき指導をせずに過去問を配ってごまかす行為は、補助金や年金をばらまいて、平気で将来世代にツケを回す行為と本質的に似ていると感じるのは私だけでしょうか。

  • 「過去問に頼らないといけない程度の指導力しか持っていない塾だ」
  • 「過去問をそのまま配ることで、本来するべき分析や教材作成をサボって効率良く儲けようとしている塾だ」
  • 「過去問を配ることで生徒に及ぶデメリットを無視した、本当の意味で生徒のことを考えていない塾だ」

・・・と客観的に捉えられる消費者が増えることを願っています。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

個別指導塾の選び方

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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