「100%専任講師」の嘘

広告などで「100%専任講師」などと大げさに売っているところがあります。

これをお読みの皆様は、こういうキャッチフレーズをそのまま信用はしないでください。

現実には、そう書いてあってもバイトを使っているところがかなり多く、本当に「100%」の塾は滅多にありません。

 

経営者側からすれば、バイトを使うほうが安上がりです。

夏や冬の講習会や入試直前などでクラスが増える時がありますが、クラス数が増える時は必要な先生も増えるわけです。

だからと言って、突然専任の先生を雇うわけにもいきませんよね。

その時は、ほぼ必然的にバイト講師が使われます。

 

また、常勤の先生が病気などで急に休みになることもあります。

それに備えて、専任教師に空きをつくっておくのは、どう考えても効率が悪いです。

そのため、急に穴が開いたところを埋めるのに、バイトを使わざるを得ない塾もあります。

(こういった時、派遣会社から送られてくる専任講師を使うところもありますが、これもほとんどバイトと同じです)

 

もちろん、バイト講師と言っても、学生や素人だけでなく、フリーのプロもいれば、元教師や元講師の人もいるため、一概に指導力が下がるとは言い切れません。

ただ、それでも「100%専任」と言うのは語弊があるわけで、誇大表示と言わざるを得ません。

そして、教育者たるもの、安易に不必要なウソをついてはいけませんよね。

 

塾という仕組み上、本当に100%専任講師体制を確保するのがとても難しいのは、分かりきったことです。

それに、100%専任講師でなくとも、ちゃんとした講師の供給体制さえ構築すれば、十分な指導力を持った塾にすることができるものですし、逆にいくら専任講師でも、1人1人の質が低ければろくなものにはなりません。

そういう意味では、チラシで「100%専任講師」とあっても、それだけで「良い塾だな」と判断する理由には全くならないわけですが・・・やはり、こう聞くと一般の保護者からすれば、良い塾のような気がするものですよね。

だからこそ、本当にそうで無い限りは、気軽に告知などすべきではないわけで、真実ならともかく、嘘混じりでそこの弱みにつけこむようなケースが無くなることを願います。

 

○ 参考:個別指導塾は学生バイト講師が基本です。

個別指導塾の選び方

 

学生バイト講師は良いか悪いか?

それでは本題の「学生バイト講師は良いのか悪いのか?」ですね。

結論から言いますと、教える生徒の年齢層によります。

 

相手が高校生ならば「悪くない」です。

そのため、学生バイト講師だからと言って、すぐに顔を曇らせる必要はありません。

むしろ「良い」場合も多いですから、有力な選択肢の1つとして検討すると良いでしょう。

 

一方、相手が小中学生ならば「良くない」です。

相手が高校生の場合と違って、実際は「悪い」場合が多いですから、こちらは注意が必要です。

よほどセンスの良い学生バイト講師はともかく、基本的には避けるようにしたほうが良いでしょう。

 

○ 参考:個別指導塾は学生バイト講師が基本です。

個別指導塾の講習に潜む大きな危険性

 

学生バイト講師が高校生には良い理由

こうなる最大の理由は「大学生が、ついこの前まで高校生だったから」にあります。

大学生バイトは「大学受験」をしたのがついこの前のことですから、高校生(=大学受験生)の気持ちや学習内容が手にとるように分かるのですね。

 

教育の基本はコミュニケーションです。

説明が分かりやすいかどうかも大事ですが、「相手の心に寄り添い、分からない気持ちを分かってあげられる」「生徒の不安に共感し、やる気を引き出してあげられる」などの関わりが重要になってきます。(もちろん、それだけでもありません)

そういう意味で、大学生は高校生の心がとてもよく分かるのです。

 

実際のところ、相手が高校生ならば、正社員の「大学を卒業したばかりの新人教師」より、バイトの「大学に入学したての学生講師」のほうが、良い指導をできる場合も多いです。

教え方の優劣に差が無ければ、高校時代に勉強した記憶が鮮明に残っているぶん、生徒目線に立った新鮮な情報提供や、生きたアドバイスができますからね。

実際に、大学生の内から起業して、学習塾や学習支援業を行うようなケースも多いですが、ほとんどが大学受験指導を対象にしたものとなっていて、これなどはまさに現役大学生という強みを活かした関わり方の一例と言えるでしょう。

 

そのため、高校生対象の個別指導や家庭教師で、大学生のバイト講師を使うのは意外と有効です。

もちろん、信頼できて力のあるプロが見つかるならそのほうが良いですが、学生バイト講師しか選択肢が無いような場合でも、決してがっかりする必要がありません。

少なくとも、大学で遊びまくって頭脳が退化した新卒や社会人を使うよりはよっぽど良いくらいです(笑)

ただし、学生バイト講師は、その性質上どうしても当たり外れが大きいですから、その中でも良い先生を選ぶようにすることを心がけてくださいね。

(テーマがそれるため、具体的な選び方の視点などは、また別の記事で取り上げます)

 

○ 参考:個別指導塾は学生バイト講師が基本です。

個別指導塾の夏期講習(冬期講習)の費用と裏側

 

学生バイト講師が中学生には不向きな理由

しかし、中学生以下は話が違います。

新社会人が大学を卒業するまでのわずか数年間で、高校生時代のリアルな実感を失ってしまっているように、大学生は高校のわずか数年間で中学生時代のリアルな実感を無くしてしまっています。

 

実は、中学3年生に小学生を教えさせても、似たような状況が現れます。

塾に来ている受験生に、小学生の子供を教えさせると、大抵「こんなのも分からんの?」という態度を見せ始め、うまく伝わらないもどかしさに当惑します。

自分は中3で、それよりずっと上のことを習っている身ですから、余計にしっくりこないのもあります。

 

すると、しばらくして「昔は簡単だったな」「いいよな小学生は簡単で」などと、自分たちの大変さや小学生の楽さをアピールし始めます(笑)

相手が先輩のためおとなしくしていますが、もちろんそんなことを言われた小学生はやる気ダウンです。

このように、たった数年で「何が分からないか」すら分からず、昔自分がされて嫌だったことさえ平気でするようになるのですね。

 

同様に、高校3年生に中学生を教えさせても似たようなことが起こります。

ですから、大学生が中学生を教えた時のギャップはかなりのものがあります。

たまにセンスの良い学生が上手に教えることはありますが、大抵はギャップの違いを埋めるのに精一杯で、とても「良い指導」ができているとは言えない状態です。

 

それに、良い大学に入るような学生にとって、小中学校の内容はそんなに苦労することなくほとんど無意識に通ってきた道です。

それだけに、優秀な生徒ほど、どうやって乗り越えてきたすら覚えていないものです。

一方で、高校生の内容は難しく、大学受験という大きな壁があるため、大抵の生徒が1度は壁にぶつかって立ち止まります。

そうした中で自分なりの勉強法を見つけたり、良い勉強法や教材などを見つけていきます。そうやって壁にぶつかり、努力して乗り越えたことは頭にしっかりと残りますし、生きた知識、体験として生徒の指導にも役立ちます。

要するに、大学に進学するような生徒は「高校生の勉強法ノウハウ」はわりと持っていますが、「小中学生の勉強法ノウハウ」は持っていないわけです。

その上、昔のことで記憶が曖昧ですから話にならないわけですね。

 

○ 参考:講師選びについてはこちらも。

先生の学力・学歴と指導力は関係あるのか?

 

学生バイト講師が中学生には不向きなもう1つの理由

いろいろ書きましたが、もう1つ致命的な理由があります。

それは、大学生に中学生の内容を解かせると、まともに解けないことが普通にあるからです(笑)

 

このことは、身近な数人の大学生に、中学生の内容を聞いてみれば分かります。

特に、純粋な暗記系の細かい知識を問う問題と、理数系の応用問題はひどいですね。

中学から高校に進む上で、英語は自然と積み上げになっているためそんなに困りませんが、暗記系科目は意外と別のことを暗記させられるため、対応できません。

それに、理系と文系とに分かれるため、特に文系に進んだ生徒の理数系のできなさはひどいです。

 

実際に、授業に入れる前の研修では、有名大学の現役学生に中学生の内容(しかも基礎内容や問題の解き方)を我々が解説するという、奇特な場面も普通に見られます。

ですから、大学生を小中学生の指導に使う場合は、かなりの研修や準備がいります。

これは新卒教師を使う場合も同じで、指導法の勉強などをしてきたまじめな新卒教師を除いて、普通の新卒教師は年をとって感覚が遠ざかっているぶんだけバイト以下の状態です。

新卒のクラスで授業崩壊するのは、教師の側の技術不足や精神年齢の低さが主原因なのですが、こうした教科知識的な面から見ても、ごくごく当たり前のことなのですね。

もちろん、いきなりできてしまうセンスの良いバイト講師もいますが、大抵は教室長や責任者がフォローしながら、ごまかしごまかしこなしているだけです。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも

中学生対象の塾を利用する際の注意点

 

学生バイト講師を教える側の質も低下している

今は昔と違い、個別指導の流行でフランチャイズの塾が大量に増殖しています。

そして、個別指導塾が増えれば、生徒あたりに必要となる先生の数も増えるわけですが、もちろん「良質な先生」の数がいきなり増えるはずはありません。

そのため、今までだったら採用されることの無かった、不適格で力不足の人であっても、先生になれてしまう状態が生じています。

 

そこをフォローするのが教室長や責任者の役割ですが、フランチャイズの個別指導塾が激増したことで、にわか教室長も激増しています。

つまり、その教室長すら指導経験が浅く、十分な指導力があるとは言えないわけで、そういうところのバイト講師などは完全に野放しの悲惨な状態になります。

もともと、優秀な学生や、勉強熱心な学生が家庭教師などをするのは日常茶飯事でしたから、個別指導で教えるのもそういう学生ばかりであれば問題無いのですが、質の悪い教室と質の悪い先生が粗製乱造されているだけに、注意が必要なのですね。

 

そういうわけですから、集団指導はもちろんのこと、個別指導や家庭教師についても、小中学生相手に学生バイト講師を遠慮無く使っているようなところはできるだけ避けましょう。

特に、家庭教師や個別指導のうち、たくさんのバイト講師を使うのが前提のスタイルの場合は、最低でも「バイト講師たちの面倒を、間近でしっかりと見てくれる力量のある専任講師」の存在が不可欠です。

まさか、本部が提供するビデオを見せるだけで、必要な指導力が備わるはずも無いですからね(笑)

現実には、「小中学生だから何とかなるさ」と甘く見て、いい加減な気持ちで教えているバイト講師も大勢いるわけですから、私ならば、相当の研修を課しているところか、よほどセンスの良い学生を使っていると確信できるところで無ければ通わせません。

(一方、高校生対象ならば、それほど問題無いです)

 

○ 参考:学生バイト講師への研修の実態はこちら

大手の個別指導塾が講師にする研修の裏側

 

学生バイト講師を使う塾に入れる前に注意したいこと

こうしたわけで、小中学生のお子さんを、学生バイト講師を使っている塾に入れる場合は、入塾前に担当するバイト講師の質を体験授業などで見極めておくべきです。

ただし、そういう塾は体験授業だけ常勤の専任講師や、バイトの中でも特別人気のある講師がやるというずるいパターンもあるため注意してください。

お子さんを担当しない講師を何人見ても、何の意味も無いただの時間の無駄使いですからね(笑)

 

そのため、保護者の立場で言うと、個別指導や家庭教師の体験をする際には、必ず「入塾後に担当してくれる予定の先生が体験授業をしてください」と頼むようにしておきたいです。

もちろん、数回くらい体験授業を受けたからと言って、一般の生徒や保護者の方が、相手の指導力の有無を正しく判断するのは難しいと思います。

せいぜい「学生バイト講師かどうか」までは分かっても、「きちんと研修を受けているか」「センスの良い学生か」を見抜くのは難しいでしょう。

ただ、最低限、先生が頼りになりそうかどうかくらいは親の目で見ることができますし、子供も教え方が合うかどうかくらいは分かりますからね。

 

なお、個別指導塾の場合は、入塾後に違う先生に代わることは日常茶飯事で、ずっと同じ先生が見てくれるほうが珍しいと思っていただくほうが良いです。

特にフランチャイズなどだと、担当の先生が無責任にコロコロと変わるところも多く、「たとえ学生バイト講師でも、この先生なら大丈夫」と思って預けたはずが、親の知らないところで、いつの間にか全く合わない先生に変えられているようなケースもありますから、入塾後も注意が必要です。

入れる前もしっかりと選びたいですが、入れた後も油断はできませんから、集団指導塾や家庭教師と違って、最低限「今お子さんを教えてくれているのは誰か?」くらいのことは、定期的に把握しておくようにしてくださいね。

 

○ 参考:学生バイト講師への研修の実態はこちら

成績が上がる塾とは?

良い塾の選び方・見抜き方 塾選びの判断基準

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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