塾選びについては、毎年毎年似たような失敗をされる方も、とても多いです。

もし事前にこうした事例を知っていれば、同じ失敗をされる方を減らすことができるかもしれません。

 

そうした思いから、何とか記事にしようと思ったのが、今回の「コンサル事件簿 ~ストーリーで読む、相談と指導の実例ドラマシリーズ~」です。

その名のとおり、過去のコンサル等での相談や、実際の指導実例をもとにしつつ、ドキュメンタリー風ドラマとして紹介しようと考えました。

 

ところがよくよく振り返ってみると、コンサルは危険を回避することが目的ですから、事前に手を打つことで大して波風立たずに話が進んでしまうことのほうが多く、事件としてお伝えするほど大きな出来事があまり起こりません。

「こうして防ぎました」「事前にこういう手を打ちました」という話を書いたところで、そういう手を打った理由まで書くと裏話になりすぎてしまいます。

また、結果だけを書いても、「それで?」で済んでしまうような面白くない内容になってしまい、とても記事には使 えません。

 

そこで、無料相談や過去の実例などを含めながら、よくある失敗例や受験における危険があるということをお伝えするような内容でお送りしてみたいと思います。

もちろん事実そのままと言うわけにもいきませんし、実際のご相談の文章を引用することで文体などが分かってしまうことは避けたいですから、あえて全文を私が書きなおしたドラマ仕立てのストーリーにしてみようと思います。

 

また、あくまでもドキュメンタリー「風」ですから、個人の特定がなされないように十分注意して、実際の事例とは適度に変更が加えてあります。

しかし、本質的な部分では、おおよそノンフィクションに近い形でお届け出来るかと思います。

それでは、第一回は「よくある大手塾の悪どいやり口」です。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

塾の面談の裏側と親が聞くべきこと

 

秋の面談シーズンのご相談

秋の面談シーズンは、入試直前と並んでご相談の寄せられることの多い時期です。

これは今から2年ほど前に寄せられた、中3生徒の保護者の方からのご相談です。

 

お母様(以下、母)「実は、塾を変えようか迷っています。相談に乗っていただけませんか?」

私「いったいどうしたのですか?」

母「夏期講習から個別指導の塾にお願いしたのですが、あまり成績が上がらなくて・・・」

 

言葉を濁しながら、今よりも成績の上がる塾に移りたいという旨を伝えられました。

しかし、季節はもう秋です。

いくら何でもこの時期に塾を変えるのは、よほどのことが無い限りすべきではありません。

 

私「今から塾を変えるのはデメリットが大きいですから、我慢できる範囲のご不満でしたら、できるだけ今のところに通われるほうが安全だと思います。成績が上がらないのは不安ですが、一応入る前の時点でよく吟味して選んだ上で入られたのでしょうから、きちんと要望を伝えながら、できるだけ任せていくのが無難ですよ」

母「はい・・・」

私「もちろん、何かはっきりとした理由や、大きなご不満があれば、思い切って変えることも必要となります。もしかすると、何か事情がおありでしょうか?」

 

言葉を濁していますが、どうやら小さな不安を感じている状態と言うよりも、塾に対する強い不信感を感じてしまっている状態のようです。

最初は話しにくそうにされていましたが、次第に気持ちを固められたのか、本当のところを話し始めてくださいました。

 

母「もともとは集団授業を希望して入塾したのです」

 

ここから、最近では典型的となった、よくある大手塾の悪どいやり口が語られ始めました。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

塾の保護者面談で話す内容

 

よくある大手塾の悪どいやり口

最初は話すのを躊躇っていたお母様も、こちらの聞く姿勢に安心していただけたのか、ようやく口を開き始めてくださいました。

 

母「もともとは集団授業を希望して入塾したのです」

 

ここまで聞いた時点で先の話の流れが読めてしまう方もいることでしょう。

ここからは、お母様とそこの教室長の先生とのやりとりの再現(?)です。

 

教室長(以下、長)「テストを見させていただいたのですが、今の成績ではついていくのは難しいと思います」

母「何とかなりませんか?」

長「無理に入れても成績は上がりませんから、まずは基礎から見直すためにも、個別指導にしてはいかがでしょう?」

母「本人は集団が良いと言っているのですが・・・」

長「個別指導で頑張って成績を上げれば、夏休み明けからは集団授業に入ることもできますよ。それならば入試にも十分に間に合います」

母「個別だと月謝のほうも高いのですよね?」

長「大丈夫です。週2コマであれば集団授業とそんなに変わりません。志望校合格のためにも、まずは個別指導で力をつけていきましょう」

母「そうですか・・・それではお願いします。息子にも話しておきます」

 

ここまでのやりとりはごくありふれたものです。

むしろ、これが本当に善意から出ているものであれば、個別指導を経由することでより良い指導成果が出ることもあるでしょう。

実際、背伸びをして集団授業に入ってもついていけずに、ただ授業を受けるだけという、お金と時間をドブに捨てるような状態の生徒もたくさんいます。

教師に指導力があればそういうことは起こりにくいのですが、下位クラスほど力の無い教師や新人教師が割り当てられることも多く、そういう教師が全ての生徒をとりこぼしなく指導しきるのは無理というものです。

 

ちなみに、塾によっては裏で下位クラスを「捨て駒」と位置づけているようなところもあります。

とりあえず授業だけは行っておいて、実際に力を入れて指導しているのは中位以上だけという、経営的にはうまいのですが、教育的にはかなり悪質なやり方をしている塾も多くあります。

最近の大手塾は、一定学力以上の生徒だけを入れ、それを鍛えて進学校に入れ合格実績を稼ぐというやり方が標準的ですから、勉強の苦手な生徒はそもそも指導対象と見ていません。

だからこそ、さっさと個別に送り込んでそこりと稼がせてもらったり、捨て駒のような下位クラスを作り不要な教員の使い所や新人の研修場所にしたりします。

それこそ、「面倒を見ているだけでもありがたいと思ってください」と言わんばかりの態度を見せるところもありますから、くれぐれも入塾前の時点でしっかりと選びましょう。

(ただし、入塾前には必ず良い顔をしますから、判別はとても難しい面もあります)

 

もちろん、本当に良いのは、どのクラスでもしっかりと面倒を見てくれて、個々の生徒に合わせた指導をしてくれるところなのは言うまでもありません。

しかし、どうしても大手塾に行きたい方もいれば、そういう企業的な塾しか近くに無い方もいるでしょう。

そういう背景を考えると、ついていけない状態でいきなり集団授業に入れて最下位クラスでひどい扱いを受けるよりは、いったん個別指導で力をつけてから、早い段階で中位以上のクラスに移ることを目指したほうが現実的です。

 

ところが、現実には個別指導のほうでも、無知なご家庭から搾取するような仕組みが存在します。

今回はまさにそのケースだったのですね。

その数日後、今度は個別指導の責任者との面談が行われました。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

個別指導塾の夏期講習(冬期講習)の費用と裏側

 

気づいたら、個別指導で数十万円

数日後、今度は個別指導の責任者との面談が行われました。

 

責任者(以下、責)「率直に言って、今の成績では志望校の**高校はとても無理です」

母「やっぱりそうですか・・・」

責「もちろん、頑張れば何とかなるのですが、週2コマの授業では十分な指導が行えません。夏休みの間に5教科を全て復習しておかないと」

母「5教科全てですか」

責「そうです。今の授業数では2教科を軽くやっただけで終わりです。5教科をしっかりやるには、こちらの夏の受験生向け特別オプションコースを受講していただかないと」

母「えっ、こんなに高いコースを!?」

責「これでも少ないほうですよ。同じ高校を目指す生徒はもっとハードなこちらのコースを選んでいます。今までの積み残しがあるのですから、ここで取り戻さなければならないのは分かっていただいていますよね?」

母「はい・・・」

責「今出費を惜しんで、来年泣くのはお子さんです。それに私立に進むことになればもっとかかります。しかし、これだけみっちりやれば成績が上がらないはずがありませんよね?」

母「確かに、これだけたくさんやれば上がりますよね・・・」

 

・・・・・・

 

私「それで、契約してしまったわけですね?」

母「はい・・・」

私「それで、そのオプションコースはいくらだったのですか?」

母「10万ちょっとです」

私「10万も・・・それはオプションだけで、通常の講習費や追加の教材費もかかるのですよね」

母「はい。全部合わせると20万近くです・・・」

私「・・・そうですか」

 

金額は地方か首都圏かによっても異なりますが、個別指導でべったりのコースを選ぶと、夏期講習だけで数十万円になることは普通にあり得ます。

今回は地方のため20万で済みましたが、ひどいところだと軽自動車が新車で買えるくらいの金額を言われます(苦笑)

 

これだけの金額をとるのですから、さぞ良い先生が教えるのだろうと思ってしまいそうですが、実際は全くそうでは無いですからくれぐれも注意が必要です。

なお、個別指導塾で受けられる指導の品質や講師のレベルなど、かなり裏側まで書いた記事であり、一部の個別指導塾を批判する内容にもなっているため、一部を限定記事とさせていただきます。

 

「高額な講習で儲ける個別指導塾の本音」 (正会員向けです)

 

事前に上記の裏側をお伝えできていれば防げた話なのでしょうが、こちらのご家庭も10万円ものを大金をはたいておきながら、当然のごとく成績は全く上がりませんでした。

ここまでの話だけでも十分ひどいと私は思うのですが、不幸なことに今回はこれだけでは終わりませんでした。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

個別指導塾の講習に潜む大きな危険性

 

定期テストは上がっても、入試や実力テストは上がらない

個別指導は単体でも高いのですが、講習ともなればかなりの高額となります。

そこに教材費やら何やらのよく分からない費用も含めると、軽く10万円以上、時には数十万円に達することもあります。

もちろん、それで成績が上がれば親御さんも出した甲斐があったと思われるのでしょうが・・・

 

私「そうして預けた結果、成績があまり上がらなかったのですね」

母「はい。夏休み中も、行っている間はやるようですけど、家では全くやらなくて心配はしていたのです」

私「それではまず成績は上がらないですね」

母「はい・・・それで、夏休み明けの実力テストも良くなくて、1学期と結果もほとんど変わらず、数学は下がってしまったほどで・・・」

 

個別指導は個々の生徒の弱点を見抜き、基礎からしっかりと埋めてあげることができれば、たとえバイト講師であっても、絶対にそれなりには点数が上がるものです。

ぼーっとしたままでも済んでしまうことが起こりがちな集団授業ならともかく、1対1(または2対1)でみっちり教えるのですから、それで多少なりとも上がらなければおかしな話ですよね。

たかだか定期テストさえ上げられないとすれば、個別指導として全く機能していません。

 

しかし、実力テストが対象となると、週に1-2時間程度といった授業時間だけで大幅に上げるのは難しく、家庭学習との連携が必須となります。

教えるのはバイト講師ですから、半年や1年といった長期に渡って預けて10点、20点が上がれば幸運なほうでしょう。

ここまでは、講習でない通常の期間での話ですね。

 

ところが、講習は短期間ですから、(定期テストならともかく)模試や実力テストに向けて本当の力を底上げするような指導をしようと思うと、それなりの指導力が必要になります。

実力を底上げしようと思ったら、それなりに適切な内容やカリキュラムで、それなりに分かりやすい授業をして、一定期間をかけさえすれば、それなりには上がっていきます。

しかし、その「それなりに適切な内容やカリキュラム」と「それなりに分かりやすい授業」さえなかなか揃わないものですから、上で出てきた「半年や1年をかけて10点、20点が上がれば幸運なほうでしょう」という話になってくるわけですね。

 

そのため、講習という短期間で実力を上げようと思ったら、「分かりやすさ」などとはまた違った指導力が要求されます。

それだけでもハードルが上がるのに、「一定時間をかける」ことが不可能となりますから、そこを補うべく、「授業時間だけでなく自習時間や家庭学習といったプラスアルファの勉強を、いかに本人の意思で前向きにやらせられるか」といった、授業外の部分まで要求されてきます。

それも、気持ちのだれがちなら長期休み中にですね。

定期テストならそこまで考えなくとも、それなりの指導をしていればそれなりには上がるため良いのですが、本当の実力を底上げするとなると、バイト講師にはなかなか大変なのですね。

 

そういう意味で、力のある教師が5時間見るところを10時間に増やせば、単に授業時間が増えるだけでなく、授業以外の時間への影響力も増しますから、それに見合った指導成果が得られます。

しかし、大して力の無い教師が5時間見るところを10時間に増やしても、所詮は5時間の差ですから、どれだけ分かりやすく教えたところで得点にすれば1点、2点にもなりません。

(定期テストならよく出る1問をできるようにすれば、それでほぼ確実に5点なり10点なりが上がるのですが、範囲の広い実力テストでは、仮に10問くらいできるようにしても、その問題どころか、その単元さえ出題されるかどうかも怪しいため、期待値として見ると、1点、2点しか上げられないわけです)

 

講習で集中的に受講すれば成績が上がりそうな気もしますが、普通に集団授業を受けていると50時間、100時間という時間にすらなってきます。

これでも多くの塾や教師は「足りない」と言うくらいですから、個別指導でいくら濃い時間を過ごしたとしても、20時間、30時間では十分なはずがありません。

しかもそれがバイト講師であれば、本当の意味で「濃い時間」とは言い難い時間にしかならないのは言うまでもありません。

短期間でたくさんのコマ数をとらせてバイト講師に教えさせることでボロ儲けのできる形の指導をとっている時点で、生徒の側にそれほど大きな成果が見込めないのは当然と言えば当然なのですね。

こうして、「決まった時間は勉強させられる」ことと、「預けた親御さんの側の安心になる」という面での効果は得られても、「実力アップ」という実質的な面では期待するほどの効果が得られずに終わりがちなのです。

 

ただ、そうは言っても、何十時間もやらせるわけですから、いくらか上がる教科は出てきてもおかしくありません。

問題は、それが1教科か2教科だけに限られてしまうことです。

 

例えば、20時間を5教科で均等に割ればたったの4時間ですから大した効果は期待できませんが、1教科に絞れば丸々20時間ですから、指導力が並でも一定の効果が期待できます。

しかし、それだけ高額な月謝を払って、たった1-2教科だけしか上がらないのでは、入試までいくらあっても足りませんよね。

いくら成績が少しくらい上がっても、「金額に見合う指導を受けている」とはとても言い難いですから、やはり月謝とのバランスも見て選ばなければなりません。

それなのに、たった1-2教科のアップすら無かったとすれば、もはや全く話にならない状態なのです。

 

ちなみに、こうした場合によくある原因としては、「計画やカリキュラムに問題があった」か、「教える先生に問題があった」か、「生徒側の姿勢に問題があった」かというあたりです。

それでは、いったいどこに問題があったのでしょうか?

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

良い塾の選び方・見抜き方 塾選びの判断基準

 

どうして成績が全く上がらなかったのか?

20万近くも払っておきながら、全く成績が上がらなかったと言われる親御さん。

それでは、一体どこに原因があったのでしょうか?

 

私「それだけたくさん授業を受けたのなら、少しくらいは上がっても良さそうですが・・・お子さんは課題などもこなしていましたか?」

母「はい、課題などは塾で残ってきちんとやっていたようです。それ以外は何もしていませんが・・・」

 

それ以外をやらないことに不満な気持ちは分かりますが、もともとやらない生徒にいきなりそれ以外まで要求するのは無理があるため、そこまでは求め過ぎでしょう。

そもそも、そこはそうさせられない教師側の指導不足を見るべきで、だからこそ「授業中しか気が行かない」ような力不足の教師では、短期で実力アップを測るのは最初から無理なのですね。

(それが学生バイト講師の場合は、力不足と言うよりも、そこまでの指導を、時給で働くバイトに求めること自体が酷と言うものでしょう)

 

ただ、課題はきちんとやっていたのであれば、少しくらいは上がる教科があっても良さそうです。

それが全く上がらないか、下がってしまうとなると、やはり何か別の問題があると考えるできでしょう。

果たして、生徒がやっているふりをしているだけだったのか、それとも教師の指導に大きな問題があったのか・・・。

 

私「5教科全てを教わっていたのですよね?」

母「はい」

私「責任者の方が指導計画を作ったと思うのですが、どれも満遍なく均等にやられていたのですか?」

母「最初に責任者の方に数学と理科が特に心配だと言われて、そちらを重点的にし、残りは軽くという形にしていました」

私「確か数学が下がったと言っていましたよね。理科も上がっていないと言う事は、理系教科に力を入れた割りには、そちらが伸びていないということですか。そうなると、理系担当の先生の指導内容が気になりますね」

母「そうなんです」

 

ここまでですと、まだ原因は特定できません。

その理系の先生の指導がまずい可能性が高いのですが、もしかするとお子さんとの相性が悪かったのもしれず、理数だけ真面目に授業を受けなかったような場合も考えられます。

他にもいろいろ可能性のあるところですから、もう少し話を聞いてみなければ分かりません。

もちろん、親御さんに聞いても真相が出てこないことは多いですから、その場合は周辺情報から推測しながら特定していくことになりますが・・・今回は、意外とあっさり真相が判明しました。

 

私「お子さんは、先生について何か言っていませんでしたか?」

母「はい。最初は何も言っていなかったのですが、子供によくよく聞いたところ、実は・・・」

 

これもまたひどい実態なのですが、残念ながらこういう教室も少ないとは言えませんから、くれぐれも注意なさってください。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

こんな塾には預けるな

 

手のひらを返す塾の気楽さと、返された親子の悲嘆

20万もの大金をはたいて、結果が全く出ないというあまりにひどい状況に、最初は親御さんも子供に原因があると考えたようです。

しかし、その後のやりとりの中で塾への不信感も高まり、腰を据えてお子さんから話を聞くと、別の実体が浮かび上がってきたという流れですね。

まずはひどい実態の前に、塾への不信感が強まった経緯をお話しましょう。

 

母「もともとは子供が悪いと思っていました。ところが、学校の秋の面談で「志望校は無理だ」と言われてしまいまして・・・」

私「内申が足りず、実力テストも下がれば、学校としてはそういう判断になるでしょうね」

母「それまでは塾で「頑張れば大丈夫」と言われていたため、私も子供の尻を叩くようにやらせていました。それで多少高くても受講したものあるのですが・・・」

私「何のために高いお金を出したのか分からない状態ですね」

母「そうなんです。それで塾に面談をお願いしたのですが、返事はあってもちっともやってくれなくて」

私「いわゆる『都合の悪い生徒は後回し作戦』ですね(苦笑)」

母「そうなのですか?」

私「いや、私が勝手にそう呼んでいるだけなのですが・・・営業上手で営利目的の強い塾ほどよくやる手ですね。邪魔してすみません、それでどうなったのですか?」

母「それで何日も経ってからやっと面談をしてもらえて。そこで志望校を変えたほうが良いか相談したんです」

私「そうしたら・・・?」

母「今まで大丈夫だと言っていたのに、手のひらを返したように変更を進めてこられて・・・」

私「そうきましたか」

母「はい。文句を言いたかったのですが、しっかり指導しているのに上がらないのは子供の頑張りが足りないからだと言われて、何も言い返すことができず・・・」

私「それはひどい言い様ですね」

母「そうなんです。子供も悪いと思いますが、下がってしまうというのは塾の指導にも問題があったのではないかと・・・」

私「それで、お子さんは何と?」

母「私もここまで言われてさすがにキレてしまい、家に帰ってから子供に文句を言ったら、激しい言い合いになってしまいました」

私「そちらに飛び火してしまいましたか。塾に対する怒りがお子さんに向かってしまいましたね。塾に預けたことで親子関係が悪化していては、本末転倒ですが・・・」

母「すみません」

私「いえ、謝る必要は全くありませんよ。謝ってほしいのはむしろその塾ですから(苦笑)けれども、お子さんから本音が聞けたのではないですか?」

母「はい、それでしばらく言い合った後に、今まで塾に対して全く文句を言ってなかった子供が、塾への不満を言い出したんです。」

私「それで不信感が強まって、ご相談に来られたわけですか」

母「はい。子供によくよく聞いたところ、実は・・・」

 

こうして、そこの高額な講習の指導がどんなものであったか明らかになるわけですが・・・

話の続きに進む前に、ここで1つ皆様にも注意していただきたいことがあります。

特に、成績上位を除いた、本当に塾が必要な生徒に当てはまる話ですね。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

個別指導塾の選び方

 

塾や教師の「責任のなすりつけ」から、我が子を守るのが親の役割

そもそも入塾時点の話は「セールストーク」ですから、親御さんは割り引いて聞く必要があります。

特に「指導理念や指導力」ではなく、「ブランド、集客力、(作られた)評判」で生徒のよく集まっている営業上手な塾ほど、入塾前には聞き心地の良い言葉を並べます。

 

今や塾業界は過当競争ですから、どこも生徒獲得に必死です。

呼んでもいないのに訪問してくるセールスマンがあの手この手で売りつけようとするのが当然であるように、塾側にとって都合の良い情報ばかりを並べ立て、時には詐欺師のように巧妙な口説き文句で引き込みます。

本当に害悪そのものですが・・・。

 

本来、教育者は自分の言葉に責任を持つべきですが、意外とそうなっていないのが現実です。身の回りの先生や塾を見てもそうですよね?

そもそも「学力をつける」ことさえできないでプロを名乗っている時点で大嘘なのですから(笑)

 

それに、無責任なことを言って、仮に指導がうまくいかなくとも「生徒の努力とやる気が不足している」「家庭での面倒見が足りない」「これまでの育て方に問題がある」などと、責任をなすりつける方法はいくらでもあります。

親御さんも、こんなことを言われれば、納得できなくとも引き下がるしかありませんし、自分が責め立てられているのですから、あったことを公に言いふらすこともできません。

こうして、ひどい塾がその実態を暴かれないままに生き延び続けるわけです。

 

本当にひどい話ですが、「責任のなすりつけ」は多かれ少なかれ、かなり多くの塾や教師がしていることです。

塾に限らず学校であっても、多くの教師が親のいないところで「あそこは親に問題がある」などと陰口を叩き、自分の問題点には目を向けずにいるものです。

教育業界というのは逃げ口上がいくらでも立ち、言いたい放題言える気楽さがあるのですね。

 

一方、親御さんはまさか訴えるわけにもいきませんし、塾にクレームをぶつけても「だったら辞めてください」でおしまいです。

そもそも、親御さんが塾に預けるのは「成績を上げてほしい」「学習習慣をつけてほしい」「適切な進路指導をしてほしい」などの目的があってですよね。

しかし、実際に月謝を支払うのはあくまでも「授業を受けること」に対してですから、いくら目的を達しなくとも、授業を受けてしまった以上は戻って来ません。

こんなところにも矛盾の温床が隠されているのです。

 

だからこそ、親御さんは塾を利用する前に慎重に判断しなければなりません。

悪質な塾や教師の得意技である「責任のなすりつけ」からは、塾に入る前の時点で本性を見抜いて逃れるしか無いのです。

そして、人生経験の浅い生徒自身がそんなことを見抜けるはずがありませんから、やはりどうしても親御さんの役割となるのですね。

無責任な塾や教師が減らない原因には、それを隠して入塾させる彼らの不誠実さと巧妙さもありますが、安易な基準でその塾を選び、生き延び栄えるための多額の運営費を与えてしまうご家庭がたくさんあるという側面もあります。

 

指導の結果を全て自分の責任と考え、他に責任を押しつけるようなずるい真似をしない良心的な教師や塾は、自分の非を認めるがゆえに営業面は下手なことが多いです。

「うちの塾に入れば絶対に成績は上がります!(ただし、本人にやる気と学習習慣があればですよ。お宅のお子さんは厳しそうですが・・・)」と大事な部分を心の中でつぶやきながら、都合の良いことだけ言う塾と、「あまりに基礎が抜けており、本人のやる気も低いため、すぐに成果が出せるかは分かりませんが、最大限お子さんに合わせた指導をお約束します」と正直に言う回りくどい塾と、どちらが営業上手かは言うまでも無いですよね。

少ないとは言え、良心的な教師や塾も地域にある程度は必ず存在するものですから、ぜひそういったところに預けるようになさってくださいね。

(もちろん、一番大事なのは「指導力があり、お子さんに合う塾(先生)かどうか」です。良心的かどうかはその後の話ですね)

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

トップ校なら塾行かな無理。といわれます。

 

個別指導の担当教師の当たりはずれをきちんと見抜く

母「はい、それでしばらく言い合った後に、今まで塾に対して全く文句を言ってなかった子供が、塾への不満を言い出したんです。」

私「それで不信感が強まって、ご相談に来られたわけですか」

母「はい。子供によくよく聞いたところ、実は、塾の授業がひどかったらしくて」

私「バイト講師ですから、当たり外れは大きいですよね。どうだったのですか?」

母「先生が、一緒に授業を受けていた別の生徒と仲が良かったらしく、その子と雑談ばかりしていたそうなんです」

私「雑談ですか・・・それは分かりやすいかどうか以前の話ですね」

母「子供が聞くと教えてはくれるけれども、聞きにくい雰囲気で遠慮してあまり聞けず、途中からはあまりやらずに黙ったままで過ごしていたと・・・。それで、テキストとノートを見たらちっとも進んでいなくて」

私「それでは成績が上がるはずも無いですね」

母「そうなんです。これって全くの無駄ですよね?もっと早く分かっていたらと思うと・・・」

私「分かっていても、塾が手を打ってくれていたかは怪しいですよ。雑談していれば、責任者は普通分かるはずです。不在か何かで雑談に気づかないか、雑談に気づいても咎めないかしている時点で、教室として機能していないわけですから。大体、バイトがそういう指導をする教室は、責任者に問題があることがほとんどですしね」

母「そうですか・・・」

私「それと、もしかするとお子さんも一緒になってしゃべっていたのかもしれませんね。個別指導ですから、2人の内1人が頑張っていれば、さすがにそこまで崩れませんから」

母「そうかもしれません。言われてみると歯切れが悪かった気も・・・」

私「たとえそうだとしても、どのみち指導としては成立していないわけですから、あまりにお粗末ですね。そんな状態になってしまっている時点で終わっています」

 

よくあるパターンは「生徒が、授業以外の勉強をしていなかった」というもので、今回もそこで落ち着きかけた話です。

しかし、実際には今回のように「授業中すらまともに勉強していなかった」事態も起こり得るのですね。

これがバイト主体の上に、指導力(管理能力)も低い塾の怖いところです。

特に個別指導は、関わる教師が固定されるために、はずれの先生に当たってしまうとその被害は甚大ですから注意が必要です。

 

よくこんな指導で高額な講習費をとれるものだと思いますが、仕組み上は単に「単価×授業コマ数」で課金されているだけですから、低質な指導になることはごく普通に起こるだと言わざるを得ません。

そもそも個別指導は、指導の質が高いから高額なのではなく、単に1時間あたりの単価設定が高いために、一定の時間数を受講すると自然と高額になるというだけです。

指導するのはバイト講師ですし、特別研修が行われているような塾もほとんどなく、素人と変わらない指導をただ「少人数(1対1や1対2」で教えてくれるというだけなのですね。

 

講習で何十万もの金額を提示されると、「それだけの指導が受けられる」「よほど効果があるに違いない」などと思ってしまいがちです。

しかし、実際は全くそんなこともなく、向こうはただ「授業コマ数が多いから高いだけで、特別な責任も生じない」と思っているものです。

いわゆるプロが高い金額で、責任をもって指導を引き受けるのとは根本的に違いますから、そこは誤解の無いようにしてください。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

学生バイト講師は良いか悪いか?

 

その後の受験結果

あまりに長くなってきたため、ここからは簡潔にお伝えしましょう。

最初は「志望校に間に合う」と期待させるような言葉で入塾させたにも関わらず、あまりにお粗末な指導で、全く成績が上がることも無かったその生徒。

秋の面談で学校から「今のままでは志望校は無理」と断言され、それを塾に伝えると、手のひらを返したように私立単願を奨められたのです。

それで不信を感じて、ご相談をいただいたのですね。

 

大事な夏休みを棒にふるようなことをしなければ、もう少し何とかなったかもしれません。

同じお金をかければ、もっと違う塾に通わせる選択肢もあったことでしょう。

あまりにひどい結果に怒りすら感じますが、済んだことをどうこう言っても始まりません。

 

さすがに内申も得点も全く届いていない現状では厳しく、特に内申が致命的な状態だったため、合格可能性が極めて低いことを正直にお伝えしました。

夏休みの指導がしっかりしていれば、もう少しは取り戻せていた可能性はありましたから、その点が悔やまれます。

 

そして、「それでもどうしても勝負したい」と言われたため、併願の私立のアドバイス(塾で奨められていたところよりも良い選択肢の提案)をした上で、全力で頑張ってほしいとお伝えして終わりました。

その後、公立の受験は失敗したものの、私立のほうはおおよそ希望どおりのところへ進むことができたとご報告をいただいたのはせめてもの救いでしょう。

 

一方、その塾へ不合格を伝えに行った際には、「言うとおりに志望校を下げておけば良かったのに」と言われ、その上「同じことを繰り返さないためにも、うちの高等部に入ってはどうか?」というあり得ない話をされたそうです(苦笑)

営業熱心なのは良いことかもしれませんが、やはり「良心」と「力」の無い塾の営業力は、犯罪に近いものがあると思います。

 

営業一辺倒の塾が減り、本当に良い塾が増えることを願って、今回の事例は終わりにしたいと思います。

皆様も、塾選びはくれぐれも慎重になさってくださいませ。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

成績が上がる塾とは?

The following two tabs change content below.

楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

おすすめコンテンツ

楠木塾 メール会員
楠木塾 メール会員