「先取り教育の可能性」と「公文式の有用性」についてはいろいろ言われていますよね。

今回は、これについて見ていきましょう。

 

公文式に限らず、他人の体験談を鵜呑みにするのは危険

ネット上でも、ブログやニュースや掲示板などでもいろいろ書かれていますが、素人判断していることが多く、あまり参考になりません。

中には自分の体験から一方的に賛成・反対の人もいて、議論の形にもなっていません。

 

勉強法選びや塾選びで大前提となるのが、「生徒に合わせた学習法を選択するべき」ことです。

公文式を絶対無二のものと見るのは危険ですし、逆に、公文式では力がつかないと決めつけるのも危険です。

もちろん、ある人(の子供)にとっては実際に体験した出来事なのかもしれませんが、それが別の人(の子供)にも当てはまる保証はどこにも無いですよね。

その点を無視して、「絶対に良い」「絶対に駄目」と決めつけるような言い方をしているようなものは、確実に参考にはなりません。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

こんな塾には預けるな

 

 

公文式や先取り教育「以外」の要因が含まれていないか?

もうひとつ判断するのに難しいのが、「その力が当該指導のみでついたかどうかが断定できない」点です。

これは全ての教育指導において問題となる、効果測定の話ですね。

 

例えば、ある特定の塾に行って成績が上がったとしても、

  • その塾のおかげ
  • 学校の指導が良くなったから
  • 本人の頑張りのせい
  • 実はもともとそういう力があったが、勉強量が増えてそれが開花しただけ

このようにいろいろな見方ができます。

本人や周囲の人間は「塾に行ってから成績が上がった → 塾のおかげ」、単純に判断しがちです。

しかし、本当のプロであれば、仮に自分の指導で成績が上がったとしても「何か他の要因があったかもしれない」「自分の指導も影響を与えたが、実は何か別の要因も影響を与えたかもしれない」と考え、それを探るべきです。

(成績に限らず、教育とはたった1つの要因で決まることはほとんど無く、複数の要因が絡み合って決まるものですからね)

 

そして実際に探してみると、そういった別の要因が見つかることがほとんどです。

そうすると、以降はそうした要因を意図的に発生させることで、さらに指導成果が上げられるようになります。

この流れは、いわば指導力向上の源泉なのですね。

それを、仮にいくら指導力があったとしても、「成績が上がったのは自分の指導のおかげだ」と思い込んでしまう自信過剰な先生では成長できません。

 

しかし、ほとんどの教師はそうした「学力向上の隠れた要因を見つけよう」などとは思いませんし、さらに「隠れた要因を自分で意図的に与えてしまおう」とも考えません。

これこそが力のある先生と無い先生の差を生むわけですね。

勉強法を評価する時も、こういったあたりを踏まえた上で無いと、何も生まれないのは言うまでもありません。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

個別指導塾の選び方

 

先取り教育をするべきか?

「先取り教育」は、一部の生徒には確実に有効ですが、一部の生徒には弊害のほうが多いこともあります。

これについては、個々の生徒に合うか合わないも重要ですが、先取りのしかたも重要になってきます。

その生徒の学力でいけるぎりぎりのところまで進めるのか、あえてもっと先に進めてから戻るのか、一部に絞って先取りするのか、それとも全体的に先に進めるのかでもだいぶ違ってきます。

さらに、先取りをすることで根本の学力向上を目指すのか、時間的余裕を目指すのか、モチベーションアップを目指すのかの話もあります。

先取りしたおかげで「勉強が楽になった」と言う生徒もいれば、「先に進みすぎて分からなくなった」と言う生徒もいますからね(笑)

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

中学生の先取り学習の秘訣 ~メリットとデメリット~

 

公文式の本当の強み

ちなみに、公文式は先取り学習が注目されがちですが、本当にすごいのはテキストの質の高さです。

プロの目で、いろいろな教材会社や塾のテキストを見比べてみれば分かりますが、公文式のテキストのレベルは非常に高いです。

単純に問題の質が良いのもあるのですが、一番は「設計思想が一貫している」ことですね。

 

事実、世の多くのテキストはその場しのぎと言いますか、学年や単元によって指導法がばらつきますし(素人目だと同じに見えます)、その思想を実現するための方法論もあまり練られていません。

せいぜい見せ方を工夫するくらいで、モチベーションなどの観点から言うとそれはそれで大切なのですが、力をつけることに関して言えば、テキスト設計の思想が最も大きな鍵を握ります。

そういう意味でも、公文式の教材は良くできているわけですね。

 

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予習型と復習型の塾の選び方

 

公文式の弱点

ただ、公文式の弱点は、上にも書いたようにモチベーションの部分です。

教室長も、脱サラ組、地域の主婦、定年退職した先生などが多いですから、塾指導に関しては完全に「素人」ですよね。

もちろん専門塾でも素人はたくさんいますが、塾の場合はその教材を使うことを前提とした研修が「日々」行われるのに対し、公文式は公文式の教材を使うことを前提とした研修が「日々」行われることはありません。

それに、メインの教員も1人のことが多いため、相談や修正ができません。

生徒だけでなく教師もまた、永遠の学習者の1人ですから、身近に見習える先輩や刺激し合える存在がいないのは痛いです。

さらに、もし先生と生徒とで肌があわなければ、その生徒は復帰の見込みがありません。

他の教室を紹介してくれるような良心的な運営者もほとんどいないでしょう。

 

そういった弱みがあって、テキスト本来の力を生かしきれていない面もありますから、「公文式がとにかく素晴らしい」と礼賛するつもりはありません。

通う教室によっては、勉強嫌いにさせるだけの悲惨な結果になるところもあるでしょう。

 

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学生バイト講師は良いか悪いか?

 

公文式だと思考力が育たない?

また、よくある「思考力がつかない」についても、一概には言い切れません。

そもそもが「思考力を伸ばす」という思想で作られていないこともあるため、確かに思考力がつきにくいことは否定できません。

しかし、教材以外のあとの部分は先生のやりよう次第です。

結局は、どんな教材でも、学習者と指導者の使い方次第です。

考える力を重視した指導をしているくせに、考えない生徒を多数育てている学校や塾がたくさんあるのを見ても分かるように、単に先生の指導力不足が原因のことは多いものです。

 

ただし、反対に「公文式で思考力がついた」と言う人もいますが、それを鵜呑みにするのも考えものです。

こちらはこちらで「別に公文式以外の勉強法をさせても力がついていたのでは?」と思えるような生徒もいますから、あまりあてにはなりません。

結局のところ、個人的体験を取り出して一般化しても、あまりあてにはならないのですね。

 

「その生徒が別の勉強法を選択していたらどうなっていたか」ができないのが痛く、結局は効果測定の話に戻ることになります。

まさに教育における永遠の課題ですね。

 

○ 参考:塾選びについてはこちらも。

教えすぎないことの大切さ

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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