今回は、すっかり社会問題となってしまった、スマホ依存についてです。

他にも、ネット依存、ゲーム依存、SNS依存など同種のものがいくつかありますから、それらを含んだ話だと思ってください。

 

スマホ依存については、弊塾でもずっと問題視しており、スマートフォンがまだ携帯電話だった頃から取り上げてきたテーマです。

注意点や対処法などの記事をメールマガジンでも定期的に配信してきましたし、相談対応を通して実際に改善・克服された方々の声もたくさんいただいてきました。

しかし困ったことに、この手の依存が絡む問題は、問題が悪化してしまったケースほど、それ以外の家庭の内情にも赤裸々に触れることになるため、多くが非公開希望となっています。

可能なものは正会員の専用ページ内でお届けしていますが、それでも全てとは言えず、せっかくの改善のためのノウハウを共有・配信しきれていないのは残念なところです。

 

一方で、スマートフォンの普及と低年齢化により、新たにスマホ・ネット・ゲームへの依存に悩む親御さんは増えるばかりです。

そして、いくつもの実際の事例にあたってきた身からすると、通常の反抗期対応よりも対処が難しいことが多く、各家庭の状況に応じた個別的・臨機応変な対応が求められがちです。

そのため、一般論として語ることはあまり意味をなさないのですが、それでも大まかな指針を得るための参考になるだろうと思って、過去のご相談例を1つご紹介しますね。

 

高校受験が迫るのに勉強もせず、スマホ漬けで朝を迎える状態の中学生の娘

ひなママ様

反抗期で親の話は聞かず、荒びており、学校では、心の問題みたいで、教室に行けず、支援教室に行っています。
成績は下位を争う状態です。
本人は公立高校に行きたいみたいですが、この状態では全く厳しいです。
学校での面談の際は、やらないといけないと思うようですが、いざうちに帰ると、スマホ漬けで朝を迎える状態です。もちろん朝起きれず遅刻はほぼ毎日です。
休まず行くだけいいのか…と我慢する日々です。
家庭勉強する環境でないのが問題かもしれませんが、本人のやる気をどうにか起動させたいです。
やはり、家ですぐスマホの虜になっているのが問題かとは思いますが、取り上げると結果は想像出来ます。親として情けないですが。
学校では、みんな放課後学習会をしてから帰宅しているようですか、娘は早々帰り、スマホです。本当に進学する気持ちがあるなら何とかやる気になってもらいたいです。

 

スマホに依存して、受験そっちのけの子供

受験が迫る中、行きたい高校があると言いながら、ちっともやる気を見せない子供に心を悩ませている親御さんも多いと思います。

親の立場からすれば「行きたい高校があるなら頑張りなさい!」と思うわけですが、それを言っても衝突するだけなのは目に見えており、結局は言いたいこともなかなか言えず・・・と、何かとストレスもたまりますよね。

細かい状況は違っても、同じような悩みを抱えているご家庭は、全国に数えきれないほどあることでしょう。

 

スマホ依存、成績不振、心の問題・・・

今回は、成績不振に加えて、心の問題(?)に、スマホ漬けと、いくつかの問題が絡み合っているようです。

心の問題については、内容によっては先にそちらを改善すべき場合もあるわけですが、そこについては何も情報が無いですから、いったん流しておくしかありません。

ただ、心の問題を放置したまま、勉強をやる気になるケースは少ないですし、仮にやる気になっても、そちらの問題ですぐに意気消沈してしまうようなことは多いです。

そのため、本当にやる気にさせるのを望むなら、心の問題も一緒に改善(解決ではない)を目指す必要があることだけは付け加えておきます。

 

さて、そうなると残る内で最大の問題は、成績不振・・・では無くて、明らかにスマホ依存のほうですね。

もちろん、成績の上げ方から丁寧に教えてあげることでやる気が高まり、スマホ依存も弱まって徐々に勉強に身が入るようになるという流れもありますが、文章を読む限り、明らかにスマホ依存の度合いが強すぎるようです。

ちょうど少し前の記事で、3時間オーバーは危険信号だと書きましたが、「いざうちに帰ると、スマホ漬けで朝を迎える状態です。もちろん朝起きれず遅刻はほぼ毎日です」はさすがにひどすぎます。

もちろん、そういう行動をとっているお子さんにも問題はありますが、もともと子供はセルフコントロールが十分にできない存在なのですから、そこまでひどい状況になるのを許してしまった親御さんにも非が無いとは言えません。

つい「優しさ」から許してしまったかもしれませんが、自力でコントロールできていない場合には、ちゃんと正してやるのも親の愛情であることを、忘れないようにしたいものです。

 

スマホ依存の子供への対応

スマホ依存の状態で、何とか「やる気スイッチ」を探そうとする親御さんも多いですが、これはかなり無理があります。

例えて言うと、ネットやスマートフォンに依存している状態は、やる気スイッチの上にカバーが覆いかぶさっている状態と思ってください。

やる気スイッチの場所が分からない親や先生からすると、目に見えないスイッチを手探りで押す状態だと思いますが、頑張った結果たまたま運良く押すことができても、残念ながらカバーが邪魔してスイッチはオンにはなりません。

本当なら、やる気になっていたであろうアプローチをできていても、依存状態の生徒は反応しない(正確には、しづらい)わけですね。

スマホ依存やネット依存は軽く捉えられがちですが、脳の受ける影響としてはアルコール依存や麻薬中毒に似ているとも言われています。

要するに「自分で何とかしたいと思ったとしても、何ともできない」状態ですから、やる気スイッチをたった1つ押して、軽く「何とかしたい」と思わせたくらいでは全く足りません。

だからと言って、依存対象からいきなり引き剥がそうとすれば、中毒患者が暴れだすのを見れば分かるように、大変な状態になります。

(ですから、最も大事なのは、そうなる前でしっかりと線を引く事だと、まだそうなっていない読者の方は心得ておいてくださいね)

さて、これからどうすべきかについてですが、まず「このまま放置する」のは最もいけません。

自分で自分をコントロールできない状態にあるのに、それを放っておいたら、ますます悪い方向に進んでしまいますよね。

もちろん、中には自分で何とか脱出する生徒もいますし、何か外からのきっかけで脱出できる生徒もいますから、この方法が正解になる場合もあります。(そのため、そういった成功談を耳にすることになります)

しかし、それは運頼みに過ぎないわけで、可能性としてはそのまま悪化するほうがずっと高いですから、普通の人はやめておくべきでしょう。

一方、正反対の対処法は「一気に引き剥がす」ことですが、反抗期の子供に親がそれをすると、大変な騒ぎになりますよね(笑)

言う事を聞かないどころか、時には暴れたり、親に手を出したりもすることもあり、「おとなしかったはずのあの子が・・・」という痛ましい状況になってしまうのも、このパターンです。

もちろん、状況によっては一気に引き剥がすほうがうまくいく場合もありますが、この方法は「劇薬」に近いところがあり、依存が進んでいればいるほど失敗しやすいです。

もっと早めの段階ならば、状況次第でお奨めするところですが、今回のような場合には(親御さん以外の人間がするので無い限りは)避けたほうが無難でしょう。

そのため、最も現実的な対応は、「少しずつ、徐々に引き剥がしていく」となります。

ただし、タバコを1本ずつ減らしてやめられる人がほとんどいないように、このやり方をそのままやっても、現実的にはかなり難しいはずです。

それに、子供にかなりの依存状態になるのを許してしまった親御さんが、いきなりこうした対処法を実行するのは難しいという、大前提からの問題点もあります。

性格や個性の部分から「依存をしやすいタイプの子供」がいるわけですが、誤解を恐れずに言えば、関わり方の傾向として「依存をさせやすいタイプの親御さん」がやはりいます。

つまり、親御さんの側が大きく変わる覚悟を持って、努力をしていくのでないと、こういったご家庭内で完結するアプローチは成功しにくいわけですね。

 

スマホ依存改善のために、すぐに実行可能な対応は?

そのため「実現可能かどうか?」の観点も踏まえた上で、最も成功率の高い対処法は「外部の人間の助力を得る」ことだと言えます。

もちろん、こうやって別の人間に相談するようなことも有効ですが、それよりも優先して探すべきは、もっと身近で「直接」お子さんと関わってくれる距離にいる人間ですね。

 

まだ依存していない子供を、依存しないようにするアプローチに関しては、子供との距離の近い親御さんのほうが有効です。

しかし、すでに依存してしまった子供を、依存対象から引き剥がしていくアプローチに関しては、距離の近い親御さんには不向きな面があります。

何しろ子供にとっては、その依存を許してきた張本人が親御さんであるという背景もありますし、何かを「させない」関わりは、親子だと機能しづらいという背景もあります。

 

また、他の家族が非協力的で、母親がたった1人だけで戦う状況はあまりに大変です。

そのため、まずは他の家族に参加してもらうのは当然として、できれば家族以外の身近な人間や、学校をはじめとする公的機関や専門家なども含める形で対応をしていかれることをお奨めします。

もしくは、本人のやる気を高めつつ、勉強に気持ちを振り向ける中で、徐々に依存対象から引き離し、成績を上げると同時に、日常生活も正常化させていく・・・ような指導のできる、力があって信頼もできる塾や先生を見つけて、多少高くても一任してしまうというのも1つの方法です。

そうした環境や体制を構築するのはもちろん大変ですが、依存対象から直接引き剥がす困難さから比べれば、はるかに実現しやすいはずですからね。

 

スマホ依存に家庭で親御さんが対応するなら

そういう努力や検討をしてみた上で、残念ながら近くにそういった存在や場所が見つからないとなったら、覚悟を決めて親御さんが自ら事にあたることになります。

ただ、その場合も自分だけでは間違った対応をしてしまいますから、継続的に相談に乗ってくれるような友人なり専門家なりを見つけて、迷った時はすぐに相談できる環境を用意したほうが良いでしょう。

 

実際にそういう事例に触れてきた立場から、誤解を恐れず率直なことを言うと・・・スマホやネット依存の子供の対応を日常的にしている親御さんは、かなり高い確率で「正常な判断」ができなくなります。

もともと、反抗期が悪化した子供と対峙するのは、それだけで非常に疲れるわけですが、そこにスマホ・ネット・ゲームが絡むと、余計に大変なことになるのは、ほとんどの親御さんなら実感としてお分かりいただけるでしょう。

この時点でも十分厳しいのに、そこにさらに「依存」という厄介な要素が入ってくると、専門性や特殊な対応が求められる場面も多く、ますます大変になってきます。

 

正直な話、傍で冷静に見られるはずの立場であっても、対処や判断に迷うようなケースが続々と出てくるものですから、そこでプロでもない一般の親御さんが100%正しい判断を出すのは至難の業です。

実際の当事者として、真正面から子供と日々対峙し続ける立場になれば、思い悩むことがあるのはもちろん、時には強く出るべき場面で躊躇ったり、引くべき場面で押してしまったりなど、行動を誤ることも出てきて当然です。

だからこそ、最初から「1人で正しく判断し続けるのはそもそも不可能だ」とある程度割り切って、信頼できる助言を得られる状態を作っておきたいわけですね。

 

スマホ依存を相談できる専門家はどこに?

こういった理由で、外に相談できる味方がいるかどうかがとても重要になってきます。

味方づくりは、学校でも家庭内でも公的機関でもどこでも良いですし、その他で専門家が見つかるなら、それも良いでしょう。

 

ただし困ったことに、スマホやネットの依存については、ネット上に自称専門家はたくさんいても、本当の意味での専門家はまだどこにも存在しません。

例えば、以前もご紹介した、ネット依存専門の病院もありますが、これらは医学的な専門家であっても、子育てや教育の面まで含んだ専門家ではありません。

反対に、スマホ依存・ネット依存の子供を実際に多く見てきた先生であっても、医学的な専門性までは担保しきれないですし、仮に医学にも詳しい先生であっても、ネットの仕組みや文化に疎いようだと頼りないです。

現実には、実際の生徒への指導経験も乏しければ、保護者への支援で成功した実績もないくせに、専門家面をしている人達が公的機関も含めてごまんといるというのが悲しい現実ですから、相談者選びはくれぐれもお気をつけください。

 

そういった事情があるため、大抵の人は相談場所に困ることになりますし、欲を言いだしたら、誰にも相談できないということにもなってしまうでしょう。

しかし、1人で抱え込まないことの大切さは上で述べたとおりで、たとえ専門性が不十分ではあっても、信頼できる相談者を見つけておく意義は大きいです。

そして、ネット依存における日々の対応は不測の事態が多く、早い返答が確保されていないと、うまくいきづらいですから、それなりに早い対応が期待できるところに相談したいです。

ただし、遠慮なく頻繁に相談できる状態を作ろうとする時、相手が専門家であれば相当のお金もかかることになりますから、その点は注意されてくださいね。

 

スマホ依存対応も含めた最初の一歩は・・・

最後に、今回のご相談者様の話に戻っておきます。

そういった依存を含む諸々の事情を無視して、とりあえず親御さんの力だけで、今回すぐにできる目の前の対応をと言われたら・・・

まずは「子供と向き合ってみる」ことでしょう。

 

大人目線で「そのままでは駄目だ」「もっとどうにかしなさい」と言ったところで、反抗期の子供が素直に言う事を聞きはしませんよね。

しかし、生徒自身も今の状況がまずいことを、少しくらいは分かっているわけで、癇に障るような言い方さえしなければ、「何とかしよう」くらいは思わせることができます。

言ってみれば、それが最初の取っ掛かりとなる「やる気スイッチ」でもあるわけですね。

 

ただし、一時的な改善ならともかく、根本的に改善しようと思ったら、それ「だけ」だと弱すぎることは、上でも書いたとおりです。

このことは、実際に学校の面談でも「やらないといけない」と思っていても、すぐに元通りになってしまう一連の様子からも分かると思います。

また、本人が「思った」だけでは行動は変わりませんから、そこの「思いと行動の橋」をつないであげる作業も含めて、継続的なサポートが必要になってきます。

 

さらに言えば、親が思うほどに大きく改善したいと子供も思うとは限らず、むしろ親がまだまだと思う程度の弱さでしか改善したいと思えない場合のほうが多いため、そこのギャップに耐えながら進めていく我慢も求められます。

結局、細かいことまで言い出すときりが無いわけですが(笑)、本人の素直な気持ちを聞きながら、「少しでも変えていこう」という気持ちを引き出した上で、具体的なアドバイスを行っていくのが「次の一歩」となるわけですね。

 

いずれにしても、お母様1人だけでは苦しすぎますし、ご家庭内だけで戦っていくのもやはり大変でしょう。

学校はもちろんのこと、塾に通っているようであればそこも含めた身近な第三者の力を借りつつ、できる範囲のことから進めていかれてくださいね。

 

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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