反抗期で勉強しない子供に、親が直接「勉強しなさい」と言う・・・のは、とてもよくある光景ですよね。

もちろん、それで言うことを聞く家庭は当てはまらないため、これ以上は読まなくて大丈夫です(笑)

しかし、勉強しない生徒に対して、そのまま「勉強しなさい」と言ってもちっとも聞かない家庭も多いはずです。

そういう家庭の親・保護者の方はある大きな間違いを犯しています。

今日はそのことについて書きます。

 

勉強しない子が「勉強しなさい」に反抗する理由

「勉強しなさい」という言葉は、とてもよく耳にするフレーズです。

しかし、よく見ると、とても違和感のあるフレーズです。

 

○ 参考:「勉強しなさいと言われるとやる気がなくなる」と言われる親御さんもたくさんいます。

「勉強しなさいと言われるとやる気がなくなる」と言われたら?

 

ところで「反抗期」の子供は何に「反抗」しますか?

もちろん答えは、親や教師の言葉に対してです。

 

それでは、どういう言葉に一番反抗するでしょう?

大人だったらみんな一度は反抗したことがある言葉ですね。

答えは「命令」「押し付け」です。

 

自分の意思と反することを無理やりさせられるとしたら・・・普通の大人は反発しますよね。

誰しも、自分の意に反することはやりたくありません。

(けれども、時にはぐっと我慢して乗り越えなければならないことが多いのも現実です)

 

幼少期と反抗期では対応が異なる

ところが、小さな子供はあまり反抗しません。

特に親の言うことには、ほとんど無条件なくらい素直に言うことを聞きます。

親を心から信頼すればこそですね。

中には、内心嫌だと思いながら聞いている生徒など、それが原因で歪んだ成長をしてしまうこともありますが・・・とにかく、大人ほど「命令」や「押し付け」に反抗はしません。

 

これは当たり前のことですよね。

もともと小さい子は、自分1人では何もできません。

お風呂の入り方も、服の着方も、顔の洗い方も、全部最初は教えてもらいます。

強い言い方をすると、命令されたり押し付けたりされなければ身にはつきません。

 

ところが、反抗期には「自我」が芽生えます。

簡単に言うと「自分はこうしたい」「こっちのほうが正しいのでは?」といった考えが思いつくようになります。

そうすると、当然ながら親の言うことをそのままは聞かなくなります。

それが正しい判断ばかりなら良いのですが、中には「とにかく親や大人の言うことはほとんど何でも反抗する」という子供もたくさん出てきます。

「全て自分が正しい」「何が何でも自分のやりたいようにやりたい」「自分は一人で何でもできる(実際はまるでできていないのに)」といった考えに至る子もたくさんいます。

 

これが他人や社会に揉まれていくと、次第に

  • 「自分が正しいことばかりではない」
  • 「自分にはできないことや至らないことがたくさんある」
  • 「時には自分の思いが通らないこともある」
  • 「明らかに自分が正しくても、時には相手の言うとおりにしないといけないこともある」

ことを学んでいきます。

いわゆる「大人になる」のですね。

・・・または「大人社会に毒される」という表現もできます(笑)

 

ですが、反抗期真っ盛りの中学生の世代は、それこそ心のままに反抗します。

 

遅刻しそうだからと朝起こしてあげたのに、「うるさい!」「何度も言わなくても起きる!」と逆ギレしたり。

部屋が汚いから気を利かして掃除してあげたのに、「勝手に部屋に入るな!」「明日やるつもりだった!」だのと抜かしたり。

いつまで待っても勉強しないから「勉強しなさい」と言ったのに、「さっきまでする気でいたのに、言われたからやる気がなくなった。お前のせいだ!」などと、意味不明な理屈で自分を正当化しようとしたり。

 

書いていると笑い話のようですが、これを真顔で毎日のようにやられる親御さんは、たまったものではないですよね。

 

理不尽な反抗に対してはどうするか?

こうした理不尽な反抗についても「じっと我慢しましょう」と言う専門家は多いのですが、実は「徹底的にやりあう」のも1つの方法です。

もちろん、納得を生まない中途半端な思いつきの口出しは控えるべきですし、筋の通った反抗に対してやりあうのは良くないです。

それに、ぶつかりすぎて不仲になるのはまずいですから、程度はありますよ。

 

しかし、社会生活を教える上で必要な指導(説教?)もあります。

何もできないくせに屁理屈だけは達者という生徒もいますから、理論武装した上で相手の逃げ道を塞ぎ、絶対に負けないようにやると良いです。

そうすると相手も「これは手強いぞ」と思って多少は懲ります(笑)

 

もちろん、実際にこれをうまくするには、それなりの技術も要求されますから、誰でも気軽にしてみましょうと言うつもりはありません。

それに、反抗期においては、じっと我慢して見守ってあげたほうが良い場合もあるのは本当のことですからね。

ただ、理不尽な反抗に対しては、あえて引かずに戦うことが必要な場面もあるということも、絶対に忘れないようにしてください。

 

ただ、これはあくまでも日常生活においての話です。

今回のテーマである「勉強しない」場合についてだけは、話が別だと思ってください。

 

日常生活と勉強の問題は分けて考える

「反抗期のせいで、勉強をしなくなった」と言うと、まるで勉強しなくなった真の原因が「反抗期」にあるようですよね。

しかし、実際は「もともと勉強が嫌だった」「できれば勉強したくなかった」「親や先生に言われて嫌々やっていた」子供が、反抗期で正直に感情を表に出すようになっただけというケースがほとんどです。

そうなると、反抗期はきっかけに過ぎず、真の原因は「勉強が嫌だという感情」「嫌々やらされていた状態」のほうにあることになります。

 

そして、もともと嫌だった勉強を、ようやく正直に「嫌だ」と表に出せるようになった子供に対して、「勉強しなさい」といったニュアンスの言い方をすることで、素直にやるようになるでしょうか?

今まで我慢して耐えてきたのを、やっと本音で言えるようになったのに、上から押しつけるように「いいからやりなさい!」と言うようなやり方をしたら、反感を買うのは当然ですよね。

その子の中の「勉強は嫌だ」「本当は勉強したくなかった」「嫌々やらされていた」という思いを解消するもことなく、それどころか、相手の気持ちを聞き出すこともしないうちから「勉強しなさい」と言うことが不毛なのは、火を見るよりも明らかです。

それなのに、原因は「反抗期」にばかりあると考えていたら、どれだけ頑張ったところで、問題は改善しないでしょう。

 

そもそも、多くの親御さんが口にする「勉強しなさい」が指す「勉強」は、他の指導(説教?しつけ?)すべき事柄とは大きく種類が違いますよね。

起床や掃除はもちろん、家事、生活習慣、体調管理・・・など、生きる上で必要な生活能力などは、親がつけなければつける機会はほとんどありません。

こういった日常で必要な知識や技能は、学校や塾ではなく、むしろ家庭でこそ身につくものです。

 

反対に、勉強は学校でこそ身につけるべきものです。

十分な指導力を持たない先生がいるせいで、家庭で面倒を見ざるを得ないという場合もありますが、本来は勉強をしっかり教えるのが学校(先生)の役目です。

もちろん、学校の先生の側からすれば、一部の親が日常的なことを教えてくれないせいで、本来なら家庭が教えるべきことまで学校で面倒を見なければならないという言い分もあります。

こうして、学校で生活能力を教え、家庭で勉強を教える不条理な状態が生まれているわけですが・・・それぞれが正しく機能するのが本来あるべき姿ですよね。

 

それに、勉強を「やらなければならない」ことは、親以上に本人たちが嫌というほど感じています。

仕事でも、毎日出社するのが嫌なときもあれば、嫌な上司の言うことを聞きたくないときもありますよね。

それでも頑張って出社しようと考えている時に「早く出社しろ!」などと言われたり、わけの分からない上司の肩を持って「上司の言うことを聞いて頑張りなさい」などと言われたりしたら、ますます嫌になります。

 

そういった、もともと好きでやっているわけでもない勉強に対して、最も反感を買う「命令」や「押し付け」で言うのは最悪です。

反抗しやすい反抗期の時期に、わざわざ「**しなさい」などと命令形の言葉を言うこと自体、自滅行為に等しいです。

勉強が好きな生徒が相手ならばともかく、勉強嫌いで勉強しない生徒に対してまで、納得させるような理由も無しに押しつけるようなやり方をするのは、むしろ「嫌いになれ」と言っているようなものなのですね。

 

反抗期に「相手の間違いを指摘し、正す指導」は、もう手遅れ

もともと、そういう「相手の間違いを指摘し、正す指導」は、お子さんがもっと小さい「反抗期になる前」までに行っておくべきことです。

子供にいろいろ言うのは「その子が良い方に進むように」との親の思いがあればこそです。

子供が小さいうちならば、そうした親の愛情を素直に受け止めて、親のために良くなろうと頑張ります。

 

しかし、反抗期になると、そうはいきません。

言っていることが正しいかどうか、自分のことを思っているかどうかは問題ではなく、親の「押し付けの思い」や「大人ならではの考え方」が、敏感な「反抗期の子供」には受け入れられないのです。

 

そもそも、何が将来にとって本当に良いことなのかは、判断の難しいものですよね。

受験勉強でさえ「社会に出るとあまり役に立たない」などと言われますし、新聞やテレビでも「義務教育は本当に必要なのか?」「受験勉強などしなくても大学は入れる」などと真面目に議論されるような時代です。

それが事実かどうかはともかくとして、勉強さえ頑張っていれば将来が約束されるという時代はすでに崩壊し、そのこ とを肌で実感しているのが今の子供達です。

親や教師が深い根拠も無しに思いつきで言う「勉強しなさい」の薄っぺらな言葉は、聞かなくても当然です。

 

実際、親や教師などの大人たちは往々にして「こうあってほしい」という、単なる願望をぶつけてしまうものです。

それが今の時代に合わない過去の価値観であろうと、単なる親や教師が過去に果たせなかった夢であろうと、自分の見栄や出世のためのエゴであろうとですね。

もちろん、その中には純粋に心から子供の将来を思ってのものもあるでしょうが、それが本当に将来にとって良いことなのかどうかは、予知能力者でなければ分かりません。

 

これに対して反抗期の子供が、防御反応を示すのはとても自然なことです。

むしろ一定の反抗は、正しい「自我」や「価値観」を育むために必要な能力です。

親や教師の言うことを鵜呑みにするだけでは、永遠に自立はできません。

 

人間の自然な成長過程である以上、反抗すること自体を問題視するのは無理があります。

それよりも、よりによって反抗する時期に反抗したくなるような指導をすることこそが問題です。

 

「相手の間違いを指摘し、正す指導」は、もう手遅れなのですね。

やるならもっと子供が幼い、素直で盲目的なときにすべきだったのです。

(もちろん、その時点であっても、上から押しつけるようにしては、大きくなってから反発しますから、生徒が自分の意思でするように持っていくことが大切です)

 

○ 参考:男女別の対応(息子と娘)の実例

反抗期で勉強嫌いの中学生息子への対応

反抗期の娘が見張らないと勉強しない

 

反抗期に求められる関わり方

・・・とは言え、最適な機会を逃してしまったことについて、反省や後悔する必要もありませんよ。

親の責任を声高に叫ぶ教育者や、自分を強く責める保護者の方もいらっしゃいますが、子育てとは本当に大変なもので、たかが我々教育者ごときが遠い場所から口先だけで駄目出しすべきようなものではありません。

お子さんが生まれてすぐの、夜も眠れない大変な時期から数えて、いったいどれだけの時間と苦労と愛情を注いできたのでしょう。

多くの方がそうであるように、ここまでお子さんを見捨てたりほったらかしたりすることなく、まっすぐな人間に育てたことは、それだけでも本当に素晴らしいことなのです。

それに、子供には個性がありますから、何もせずに放っておいても、自分からやるようになる子もいれば、いくら手をかけても、なかなかやるようにならない子もいます。

ですから、自分の今までの育て方が悪いのだ・・・などとは思い悩まないでください。

 

これは、今まで育児や子供との関係を放棄してこなかった、全ての親御さんにそう伝えたいです。

反抗期はいわば脳の異常状態という見方もできるくらいで、そのままではうまくいかないのが普通です。

そのことで、今までの自分が間違いだったなどと思い悩むようなことは、絶対にしないでください・・・と。

それに、どれだけ思い悩んでも、過去を振り返るだけでは状況は好転しませんからね(笑)

 

誰もが、今までベストを尽くしてきたはずです。

大事なのはこれからです。

だからこそ、すでにタイミング遅れの「指摘し、正す指導」は捨てて、もう少し違う関わり方をしないといけないのですね。

 

○ 参考:反抗期の基本的な対処法を頭に入れておきましょう。

反抗期の対処法 小学生・中学生の反抗期にどう対応するか?

 

反抗期をひどくしてしまわないための注意点

反抗期には「こうしてほしい」と思うことをそのまま言っても、なかなかその通りには聞いてくれません。

もちろん、軽く言ってみるくらいは良いのですが、ほんのわずかに言っても駄目ならば、それ以上は言うのをやめておいてください。

(それが日常的なことであれば、それでもしっかりと言い聞かせるべき場面があるはずですが、少なくとも勉強に限って言えばですね)

 

もともと勉強が習慣化している生徒は、少し言えば気づいてちゃんとやり出します。

少し言われてもできないのは、もともと勉強が習慣化していない生徒で、そういう生徒はきつく言ってもやっぱりやりませんし、仮にやっても嫌々で効果も薄いです。

それだけならばまだ良いのですが、言われた生徒は見えない所で不満を溜めていき、いつか親への大きな反抗や暴言、家庭内暴力などの「大爆発」を引き起こすことさえあります。

 

勉強が習慣化していないのは、元をたどれば家庭や学校や塾での指導不足が原因ですよね。

そういった生徒に、いきなり習慣化しろと言わんばかりの「勉強しなさい!」攻撃は、我々大人の責任のなすりつけにすぎません。

ですから、「軽く言っても勉強しないのならば、もっときつく言おう」という発想だけはやめておいてください

その発想にしがみつけばしがみつくほど、お子さんのやる気は無くなりますし、未来の親子間の無用な衝突と不幸を生み出すことにつながりますから。

 

反抗期に言うことを聞かせるには?

反抗期には「させたいことを直接言う」ような関わりは通用しません。

この年代の子供に対して、口先だけでいろいろ言ったり、正論や大人の都合を押しつけたりしても、それが通用する機会は極めて少ないです。

むしろ「言えば言うほど意図したほうとは反対に進む」と思ってください。

だからこそ「反抗期」の名がついたのですから。

 

そのため、直接言うことなく、言いたいことをさせることのできる技術が必要となってきます。

例えば、すぐに実践できる第一歩の初歩的なスキル(心得)として「Aさせたいなら、Aとは言わない」があります。

どうしても勉強しない子に、自分の言葉で勉強させたいのなら、決して「勉強しなさい」と言ってはいけません。

そもそも、そのままストレートに言って言うことを聞くなら誰も苦労はしませんよね。

「やらせたいことを、そのまま言わない」のが反抗期対応のポイントの1つです。

 

・・・と言っても、そのまま言うのをやめた次には「それじゃ、代わりにどう言えばいいの?」という疑問が湧いてくるでしょう。

その時に必要なのは「やらせたいことをそのままストレートに言うだけ」とはもっと違う言い方をするか、「言ったとおりにさせる」とは別の方向からのアプローチをすることです。

 

もちろん、そこを丸投げでは話が止まってしまいますから、毎週のメールマガジンなどを通じて、実際のご相談にお答えする形で、具体例などと共に何度もお伝えしてきましたね。

また、実際には子供の数だけ正解があり、ご家庭ごとに最適な方法を考える必要がありますから、そのための根本的な考え方や対応法についての詳しい話を、無料メールセミナーなどを通じてお届けしてきました。

メールセミナー「反抗期の対応法 ~中学生の子を持つ親の心得~」

 

いずれにしても、ちょっと聞きかじって、すぐに身につくような小手先の技術では無いですから、少しずつでも焦らず地道に学び続けていくことが大切です。

軽く言ってもやらないのならば、すぐに諦める。

そしてもっと違う言い方をするか、別方向からのアプローチを考える。

そういったことを頭の隅に置いておいていただけると、無用な衝突が避けられる家庭はもっと増えると思います。

 

○ 参考:反抗期で成績が下がってしまったという場合はこちらも

「反抗期で成績が下がった」その理由と対処法

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楠木塾長

かれこれ20年以上の指導経験と、1万組以上の相談対応件数を持つに至る、プロも相談するプロ。小中学生から高校生、大学生、社会人まで幅広く指導を行うが、このサイトでは中学生指導に専門を絞って独自の情報発信を続けている。また、反抗期・思春期の子育てや教育に関しても専門性が高く、保護者や指導者への助言指導なども行っている。

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